著者
西永 英司 内山 千代子 牧 利一 斉藤 浩一 深澤 哲 鈴木 苗穂 山本 高司 村越 倫明 大寺 基靖 福田 功 大久保 章男 冨士谷 盛興 千田 彰
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.321-330, 2015 (Released:2015-08-31)
参考文献数
36

目的 : 唾液による総合的な口腔検査法の確立を目指し, う蝕・歯周病・口腔清潔度に関する7項目の唾液因子 ([う蝕関連] う蝕原性菌, pH, 酸緩衝能, [歯周病関連] 潜血, 白血球, タンパク質, [口腔清潔度関連] アンモニア) を5分間で測定できる唾液検査システム (AL-55) を開発した. 著者らは前報において, 一般的な口腔内の臨床検査結果と, AL-55で測定した7項目の唾液因子の検査結果との相関を解析し, AL-55による検査が口腔内の状態把握に有用であることをすでに明らかにした.  AL-55の最大の特徴は, 7項目の唾液因子について, 試験紙の色調変化を反射率として一括して検出できる多項目検査という点にあるが, これら個々の唾液因子においては, 従来より培養法・電極法・酵素法などの一般的な分析法が確立されている.  本研究では, AL-55の臨床応用に際し, 従来の分析法とAL-55による測定結果を比較することにより, 従来の分析法に対するAL-55の測定値の妥当性および信頼性について検討した.  方法 : 前報における研究協力者231名から, 蒸留水3mlを口に含み, 10秒間軽く洗口した後の吐出液を採取し, AL-55の試験紙に10μlずつ点着, 1分および5分後に反射率を測定した. 従来の分析法については, う蝕原性菌は培養法, pHおよび酸緩衝能はpH電極法, 潜血および白血球はラテックス免疫凝集比濁法, タンパク質はピロガロールレッド法, アンモニアはグルタミン酸脱水素酵素法を用いて測定した.  従来の分析法とAL-55による測定結果の相関について, Pearsonの相関係数検定を用いて検討し, 有意水準をα=0.01とした. また, 従来の分析法およびAL-55の測定結果を3段階に層別した際の一致率を検討した.  結果 : 従来の分析法とAL-55による測定結果との相関係数rは, う蝕原性菌が0.59, pHが−0.74, 酸緩衝能が−0.86, 潜血が−0.74, 白血球が−0.67, タンパク質が−0.75, アンモニアが−0.89 (7項目ともにp<0.01) で, 中等度~高い相関が認められた. 従来の分析法およびAL-55の測定結果を3段階に層別した際の一致率は, う蝕原性菌が70%, pHが82%, 酸緩衝能が73%, 潜血が71%, 白血球が72%, タンパク質が84%, アンモニアが90%であった.  結論 : 従来の分析法とAL-55による測定結果を比較した結果, 両者に高い相関を確認するとともに, 両者の測定結果を3段階に層別した際には, 70~90%の高い一致率を示したことから, 従来の分析法に対するAL-55の測定値の妥当性および信頼性が明らかとなった.