著者
恩田 紀更 大井 洋之 玉野 まり子 大澤 勲 富野 康日己
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.217-225, 2007-06

目的:IgA腎症はわが国の原発性糸球体腎炎のなかで最も頻度の高い腎炎である.補体成分の糸球体沈着は知られているが,血清中の補体成分の全体像は明らかにされていない.そこでわれわれは,血清中の補体成分と補体制御蛋白がIgA腎症の病態に関与しているか否かについて検討した.対象と方法:IgA腎症患者50名と健常者50名の補体価(CH50)および血清補体成分を測定した.血清C3とC4はlatex cohesive immunoassayで測定し,CH50はMayer法相対比濁法,C1qはnephelometry法,C5・C1 inhibitor・B・C4 bindingprotein・H・Iは一次元放射免疫拡散法で測定した.Mannose-binding proteinとproperdinは,ELISA法で測定した.IgA腎症患者を組織学的予後分類で4群(予後良好群,予後比較的良好群,予後比較的不良群,予後不良群)に分類し,血清補体成分との関連性を検討した.結果:IgA腎症患者では,健常者と比較しCH50・C4・B・properdin・H・Iは有意に高値であった(p<0.01).IgA腎症患者では,C4とC1 inhibitor(p<0.05),C5とC4 bindingprotein(p<0.05)の間に有意な相関が認められた.しかし,健常者ではそれらの相関は認められなかった.予後分類の予後不良群は,他の群に比べC4 binding proteinの有意な高値がみられた(p<0.05).考察:IgA腎症患者では,健常者と比較して血清補体成分および補体制御蛋白が高値であり,各補体成分間で掛1相関が認められた.また,C4 binding proteinが組織障害度と強い関連を認めた.これらのことより,血清補体の変動は,本症の病態を反映しているものと考えられた.