著者
富野 康日己
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.560-563, 1998-03-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3
著者
鈴木 祐介 富野 康日己
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.115-120, 2014-06-10 (Released:2014-08-20)
参考文献数
36

これまでの多くの臨床研究や IgA 腎症動物モデルからの知見, およびそれを基にしたトランスレーショナルリサーチなどから IgA 腎症の病因の本態は, 腎臓の固有細胞ではなく, 全身の複雑な免疫ネットワークにあることが想定されている. 特に, 「Mucosa-Bone Marrow Axis」 における免疫学的異常が議論され, 「粘膜型 IgA がなぜ骨髄で産生されるのか」 について長年研究されてきた. しかし, 免疫学の進歩にともないケモカイン・ホーミングレセプターが急速に解明され, 粘膜型B細胞が, 実効組織として骨髄や全身のリンパ組織に展開しうる具体的なメカニズムが明らかになり, IgA 腎症における Mucosa-Bone Marrow Axis の関与がにわかに現実味を帯びてきた. 一方, 以前より IgA 腎症患者では IgA ヒンジ部に糖鎖異常があることが指摘されてきた. 近年糖鎖異常 IgA の定量的解析が可能となり, IgA 腎症の病態が IgA 分子の側からも検討されるようになった. それにより, 糖鎖異常 IgA ばかりかその異常糖鎖を認識する内因性抗体による免疫複合体形成も, IgA 腎症の病態進展に深く関与することが明らかになった. さらに最近の研究では, 糖鎖異常 IgA および内因性自抗体産生の主座が扁桃であることが強く示唆されている. IgA 腎症患者の扁桃において, APRIL や BAFF といった B 細胞分化誘導因子の過剰発現も確認され, IgA 腎症患者の扁桃 B 細胞の分化異常が病態に関わっている可能性も高い. 本稿では, IgA 腎症の粘膜異常および糖鎖異常 IgA 産生機序に触れながら, 扁桃 B 細胞の IgA 腎症の病態における役割を概説する.
著者
豊田 一恵 谷本 光生 松本 昌和 合田 朋仁 堀越 哲 富野 康日己
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.387-394, 2011-08-31 (Released:2014-11-11)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

目的: オウギ (黄蓍;astragali radix) は, マメ科のギバナオウギ, ナイモウオウギの根から調製される生薬で, 血圧低下・利尿・肝保護・免疫増強・抗菌・強壮・鎮静作用などを有し, 種々の漢方薬に調合されている. 慢性腎不全患者において, オウギ投与により血清クレアチニン値の低下することが報告がされている. しかし, そのメカニズムは十分には解明されていない. また, 腎不全では, 酸化ストレスマーカーの一つである一酸化窒素合成酵素 (NOS) が腎組織で過剰発現しており, 腎不全の進展・増悪因子の一つとして知られている. 今回, 腎不全モデルである5/6腎摘ラットを用い, オウギ投与による腎機能ならびに腎組織におけるNOSの発現抑制効果について検討した. 方法: 8週齢で5/6腎摘出術を施行した雄性SDラットを, 12週齢から12週間 (1) オウギ10g/kg体重/日を混餌投与したオウギ投与群 (n=5), (2) 未治療群 (n=5) の2群に分け, (3) 非腎摘出群 (n=5) を対照とした. それぞれの群に対して, 尿中アルブミン/クレアチニン比 (ACR), 血清クレアチニン, 血中尿素窒素 (BUN), クレアチニンクリアランス (CCr), 尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG) を測定した. また, 24週齢で腎組織の糸球体硬化指数 (Sclerosis Index) をPAS染色により算出し, 血管内皮型NOS (eNOS), 誘導型NOS (iNOS) および酸化ストレスマーカーであるニトロチロシンの発現を腎免疫組織染色により検索した. 結果: CCrは, オウギ投与群で有意な改善が認められた (p<0.05). 血清クレアチニン, BUNは, オウギ投与群で未治療群と比較し低下傾向がみられた. しかし, ACRや尿中8-OHdGには有意な差はみられなかった. オウギ投与群の腎糸球体硬化指数 (Sclerosis Index) は, 未治療群に比べ有意な低下が認められた (p<0.0001). また, オウギ投与群におけるeNOS, iNOSおよびニトロチロシンの発現は, 未治療群に比べ有意な低下が認められた (p<0.0001). 結論: オウギは, 腎におけるNOS (eNOS, iNOS) およびニトロチロシンの発現抑制を伴って, 腎糸球体硬化病変の進展を抑制する可能性が示された.
著者
柘植 俊直 ウィグノ プロドジョスドジャジ モハマド ヨギアントロ 来栖 厚 大澤 勲 小林 則善 清水 芳男 スハードジョノ ダルメイザー ジノヴァ ナインゴラン アイーダ リージャ プラナワ チャンドラ モハニ ジョーコ サントソ ウィドド リザニアンシャ 堀越 哲 富野 康日己
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.100-106, 2010

背景 : 慢性腎臓病 (CKD) は, IgA 腎症やループス腎炎などの慢性糸球体腎炎, 糖尿病腎症や腎硬化症など, 全ての慢性腎臓病を含んだ疾患概念である.CKD は末期腎不全 (ESKD) の準備状態であると同時に, 心血管疾患 (CVD) の重大なリスク因子であることが明らかとなっている.アンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB) は, 降圧薬として広く用いられているが, 両薬剤の腎保護効果にも注目が集まっている.今回, 順天堂大学とインドネシア大学, アイルランガ大学は, 高血圧を伴うCKD 患者におけるACE阻害薬イミダプリルの尿蛋白減少効果を検討する共同研究を行った.方法 : 23名の高血圧を伴うCKD 患者にカルシウム拮抗薬 (CCB) とイミダプリルを投与し, 腎機能と尿蛋白量の変化を治療前後で比較した.CCB を投与している患者にイミダプリルを追加投与 (5mg/日) し, 血圧が目標値 (130/85mmHg未満) に達しなかった場合には, さらにイミダプリルを10mg/まで増量し, 投与後12 ヵ月で評価した.結果 : CCB にイミダプリルを加えることによって, 6 ヵ月後・12 ヵ月後の収縮期血圧および拡張期血圧は有意に低下した.尿中アルブミン排泄量は, 投与開始時には顕性蛋白尿レベル (0.3g/g・Cr以上) であったが, 6 ヵ月後・12 ヵ月後は共に微量アルブミン尿レベル (0.299g/g・Cr 以下) にまで有意に減少した.結語 : イミダプリルとCCB の併用によるCKD 患者の腎保護効果を, 順天堂大学とインドネシア大学, アイルランガ大学の共同研究により検討した.イミダプリルを軸とした治療により, CKD患者の血圧は有意に低下し, 尿中アルブミン排泄量は有意に減少した.以上より, イミダプリルは高血圧を伴うCKD 患者において, 腎保護的に作用することが確認された.
著者
堀越 哲 井尾 浩章 中田 純一郎 大澤 勲 濱田 千江子 富野 康日己
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.123-130, 2012

目的: レニン·アンジオテンシン(renin-angiotensin; RA)系阻害薬オルメサルタンの降圧度と腎保護効果の関係について検討した.<BR>方法: 2004年から2009年の間に順天堂大学医学部附属順天堂医院腎·高血圧内科外来通院加療中で, 12カ月以上, オルメサルタンが継続投与され, 降圧薬処方内容, 量の変更がなく, 診察時血圧, 推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)·蛋白尿測定が定期的に行われていた患者109名を対象とし, 投薬背景や原疾患別にカルテベースで分析した.<BR>結果: すべての群で有意な降圧効果を認めた. 新規にオルメサルタンの単独投与が開始されたA群では, 有意な蛋白尿減少効果を認めたが, eGFRは低下傾向を示した. RA系阻害薬以外の降圧薬投与中にオルメサルタンが追加されたB群では, eGFRの低下は認めなかったが, 蛋白尿減少効果もみられなかった. ほかのRA系阻害薬の単独投与からオルメサルタンに切り替えられたC群では, 切り替え時の血圧が比較的低く, 蛋白尿減少効果は軽度で有意差を認めなかった. RA系阻害薬を含む降圧薬の多剤併用中にアンジオテンシンII受容体遮断薬(angiotensin II receptor blocker; ARB)がオルメサルタンに切り替えられたD群では, オルメサルタン投与量が最も多く, 蛋白尿減少効果は軽度でeGFRが有意に低下していた. 原疾患別にみると, 本態性高血圧蛋白尿陽性群で降圧度とeGFRの間に有意な相関がみられた. 本態性高血圧蛋白尿陰性群では, 蛋白尿陽性群に比して投与開始前のeGFRが高く, 投与後の有意なeGFR低下はみられなかった. 一方, 慢性腎炎症候群では, 12カ月後の降圧度と蛋白尿減少率およびeGFRとの間に相関はみられなかった.<BR>考察: オルメサルタンには, より強力な降圧効果と降圧効果に依存しない蛋白尿減少効果が認められたが, 一方でeGFRは低下した. オルメサルタンがeGFR低下速度を促進あるいは減速したのかは不明である. 原疾患や病態の違いにより, RA系の関与の質や量が異なることが示唆され, RA系阻害薬の投与にもその質·量の使い分けが求められていると思われる.
著者
恩田 紀更 大井 洋之 玉野 まり子 大澤 勲 富野 康日己
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.217-225, 2007-06

目的:IgA腎症はわが国の原発性糸球体腎炎のなかで最も頻度の高い腎炎である.補体成分の糸球体沈着は知られているが,血清中の補体成分の全体像は明らかにされていない.そこでわれわれは,血清中の補体成分と補体制御蛋白がIgA腎症の病態に関与しているか否かについて検討した.対象と方法:IgA腎症患者50名と健常者50名の補体価(CH50)および血清補体成分を測定した.血清C3とC4はlatex cohesive immunoassayで測定し,CH50はMayer法相対比濁法,C1qはnephelometry法,C5・C1 inhibitor・B・C4 bindingprotein・H・Iは一次元放射免疫拡散法で測定した.Mannose-binding proteinとproperdinは,ELISA法で測定した.IgA腎症患者を組織学的予後分類で4群(予後良好群,予後比較的良好群,予後比較的不良群,予後不良群)に分類し,血清補体成分との関連性を検討した.結果:IgA腎症患者では,健常者と比較しCH50・C4・B・properdin・H・Iは有意に高値であった(p<0.01).IgA腎症患者では,C4とC1 inhibitor(p<0.05),C5とC4 bindingprotein(p<0.05)の間に有意な相関が認められた.しかし,健常者ではそれらの相関は認められなかった.予後分類の予後不良群は,他の群に比べC4 binding proteinの有意な高値がみられた(p<0.05).考察:IgA腎症患者では,健常者と比較して血清補体成分および補体制御蛋白が高値であり,各補体成分間で掛1相関が認められた.また,C4 binding proteinが組織障害度と強い関連を認めた.これらのことより,血清補体の変動は,本症の病態を反映しているものと考えられた.
著者
檀原 高 岡田 隆夫 建部 一夫 坂本 直人 富木 裕一 案浦 健 鈴木 千賀子 中村 真一郎 津村 秀憲 栗原 秀剛 小林 敏之 諫山 冬実 奥村 彰久 田村 剛 富野 康日己
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.651-656, 2007-12

定例の順天堂医学教育ミニワークショップが,2007年6月1日に開催された.50名以上の教員が参加し適切な試験問題の作成のための討議を行った.午前のセッションでは,予め作成していただいた定期多肢選択問題をスモールグループで検討修正を行った.午後のセッションでは,基礎医学系教員にはCBTにおける順次解答4連問を,臨床医学系の教員には4年次および5年次の臨床実習における口頭試験問題を作成していただいた.
著者
船曳 和彦 岡崎 圭子 仲本 宙高 有賀 誠記 相澤 昌史 金子 松五 蒔田 雄一郎 堀越 哲 富野 康日己
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.318-323, 2008-09

目的:順天堂東京江東高齢者医療センターは2002年6月1日に開院し,質と安全度の高い先端的な高齢者医療を提供してきた.開院後5年間における血液浄化室にて施行した血液透析患者について解析し,今後の高齢者に対する透析療法に活かすため,わが国全体の慢性透析療法の現況と比較検討した.対象・方法:2002年6月より2007年5月までの5年間に,当センター血液浄化室にて透析療法を施行された慢性維持血液透析入院患者および維持血液透析療法に導入された入院患者計431名(男性265名,女性166名)を対象とした.対象患者を1年毎に性別,平均年齢,新規血液透析導入患者数を統計学的に評価するとともに,新規血液透析導入患者の原疾患および入院中の死亡原因について調査し,日本透析医学会の統計調査と比較検討を行った.結果:毎年透析患者数は増加傾向で開業時と比較して直近で約3倍となっていた.5年間の平均年齢は,70.8歳(男性69.4歳,女性73.4歳)であった.また,5年間で計89名(男性61名,女性28名)が新規導入され,平均年齢は71.6歳(男性66.7歳,女性76.4歳)であった.患者の原疾患は,糖尿病性腎症46名(51.7%),腎硬化症17名(19.1%),慢性糸球体腎炎7名(7.9%)であった.当センター入院中に46名が死亡し,原因として感染症が最も多く(14名),死亡患者全体の30.4%を占めていた.悪液質/尿毒症により死亡した5名の入院時平均血清アルブミン値は,24g/dlと低下していた.結論:当センター血液浄化室にて透析療法を施行された患者は増加傾向であり,2006年6月からの1年間では平均年齢73.6歳と全国と比較して7.2歳高齢であった.原疾患も糖尿病性腎症が半数以上を占め,急速進行性糸球体腎炎の比率も高いことは高齢化に起因すると思われる.死亡原因としては感染症が最も多く,患者の高齢化や糖尿病患者の割合が多く免疫不全により誤嚥性肺炎や敗血症に罹患しやすいためと考えられた.悪液質/尿毒症による死亡者は全例が高齢で長期透析患者であり,低アルブミン血症を伴っていたことから当センター入院中の高齢長期透析患者に対する適切な栄養管理および透析効率の確保が一層必要と思われる.