著者
大内新興化学工業株式会社
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.507-510, 1990-08-20
被引用文献数
1

チウラムの安全性評価を行なうための各種毒性試験を実施した.その結果, 本剤は急性毒性が低く, 皮膚に対する刺激性はなく, 感作性も軽微であった.また, 眼刺激性が原体に観察されたが, 実際の使用時の製剤には認められなかった.慢性毒性試験ではビーグル犬の高用量群において重篤な毒性症状が発現し雌雄の全例が死亡したものの, ラットでは一部の臨床病理学的検査に異常を認めたにすぎず催腫瘍性も認められなかった.また, マウスにおいても催腫瘍性はみられなかった.催奇形性はなく繁殖能力に悪影響を及ぼさなかった.変異原性試験ではDNA修復試験および復帰変異原性試験で弱陽性を示したが, 小核試験および染色体異常誘発性試験は陰性であった.チウラムはチウラム・ジラムの混合剤として昭和53年2月に農薬登録を取得したが, 昭和63年10月にチウラムおよびジラムの分離評価が実施された.現在の登録保留基準値はリンゴ1.0 ppm, ナシ0.5 ppm, モモ0.5 ppmおよび柿0.5 ppmと設定された.チウラムは定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が高い薬剤であり, 農業資材として有用であると考えられる.