- 著者
-
草野 洋介
高村 昇
大園 忠幸
青柳 潔
安部 恵代
- 出版者
- 長崎ウエスレヤン大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
ホモシステイン代謝に関連する酵素であるMTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子多型が、動脈硬化の生理的多型性に与える影響を調べるために、MTHFR遺伝子型の解析、および動脈硬化進展度を血管内膜の複合体厚(IMT)ならびに脈波伝搬速度(PWV)により測定を行った。また、近年、動脈硬化の進展過程における炎症反応の関与の重要性が指摘されおり、特に、血清高感度CRP(hs-CRP)は血管障害の独立した危険因子になることが疫学研究により見出されている。動脈硬化の進展に関する全身的共関の一要素として、血清脂質値などの血清生化学検査に加え、hs-CRPの計測を行った。その結果、現在動脈硬化の推移を把握する上で最も鋭敏であるとされる高感度CRP(hs-CRP)や血漿葉酸の濃度は若年者の段階からすでに性差が存在すること、頚部超音波検査での頚動脈内膜・中膜複合体厚(Carotid Intima Media Thickness: CIMT)は加齢にしたがって肥厚が見られ、男女差もそれにつれて明確になってくることなどを示した(Hara et al. Clin Chem Lab Med 2006)。さらに最近我々は、日本人中高年者におけるホモシステインとCIMTの決定因子についての解析を行い、その結果CIMTは加齢、性に加えて収縮期血圧が独立した因子であることを示した(Takamura et al. submitted)。このことは動脈硬化の予防における、適切な血圧のコントロール、特に収縮期血圧の適切なコントロールが重要であることを示すものである。現在これまでに得られた研究データを下に動脈硬化の生理的多型性にMTHFR遺伝子多型が与える影響を解析中である。