著者
山下 俊一 高村 昇 光武 範吏 サエンコ ウラジミール
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

チェルノブイリ原発事故後、放射線ヨウ素内部被ばくによる甲状腺発癌リスク以外に、ニトロソアミン系における発癌動物モデルが証明され、近年の環境汚染問題でヒトにおいてもその可能性が報告されている。そこで、ベラルーシの甲状腺癌症例の地域別分布と放射線ヨウ素被ばく状況、大量有機農薬使用による水質汚染に着目し、その関連性について包括的なデータの検証と共同論文発表を行なった。これに合わせて、福島原発事故後の甲状腺超音波検査の解析結果から、スクリーニング効果以外の甲状腺癌発見増加の原因として、川内村の異なる水源の飲用水中の硝酸・亜硝酸動態を測定し、その因果関係を検討したが、有意な関係性は認められなかった。
著者
山下 俊一 高村 昇 中島 正洋 サエンコ ウラジミール 光武 範吏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

チェルノブイリ周辺の海外連携研究拠点を中心に、放射線誘発甲状腺がんの分子疫学調査を継続し、共同シンポやワークショップを開催した。チェルノブイリ甲状腺がん関連の英語単行本を共同出版し、各種招聘事業と被ばく医療研修指導を行なった。放射線誘発甲状腺がんの感受性候補遺伝子群のSNPs解析を中心に、分子疫学調査と分子病理解析を行い新知見を報告した。これらの成果を、福島原発事故後の県民健康調査事業における甲状腺検査の結果解釈に応用し、福島とチェルノブイリの甲状腺癌の違いを臨床像や分子遺伝学的見地から明らかにした。
著者
山下 俊一 高村 昇 中島 正洋 光武 範吏 サエンコ ウラジミール 大津留 晶
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

ベラルーシにおける連携研究拠点を基盤としつつ、同時に被ばく集団のコホートをウクライナでも確立、当研究における分子疫学調査は世界でも唯一無二のコホートとなり、その学術的意義は極めて大きい。これにより、散発性甲状腺癌の発症関連遺伝子であるNKX2-1近傍のSNPは、放射線誘発癌との関連は否定的となった。さらに2011年は東日本大震災における福島第一原発事故のため、申請時の計画に加え、震災対応のために、当研究における国際連携ネットワークを活用、チェルノブイリ原発事故で得られたエビデンス、経験を福島での震災対応に活かすことが出来ている。
著者
高村 昇 平良 文亨 折田 真紀子 高橋 純平
出版者
長崎大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

本研究で明らかにすることは、1)チェルノブイリ周辺地域における甲状腺超音波所見の自然史と、2)甲状腺がんの自然史およびその長期的予後、である。研究代表者が20年以上にわたって共同研究を行ってきたジトーミル州立診断センターでは、2006年からは現在福島県民健康調査で使用されている超音波装置と同じ機器を使用して甲状腺超音波検査を実施し、全ての受診者の画像を経年的に保存している。本研究では、事故(1986年)前に生まれ、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被ばくをうけた群(被ばく群)と事故後に生まれ、甲状腺の内部被ばくを受けていない群(非被ばく群)の両群における初診時の画像を、福島県民健康調査の甲状腺検査の診断基準に合わせて分類(A1、A2、B)し、それぞれの群の画像を前向きに解析していくことで、甲状腺超音波所見の自然史を明らかにしていくと同時に、被ばく群と非被ばく群における所見の違いの有無についても解析を行った。その結果、被ばく群と非被ばく群において、甲状腺超音波所見に差異があったが、年齢で調整することによって有意差は消失することを明らかにした。すでに結果を取りまとめて論文を執筆し、国際専門雑誌に投稿している。今後は、甲状腺がんと診断された症例については、診断される以前の画像を後ろ向きに解析することで、甲状腺がん超音波所見の自然史を明らかにしていく。放射線被ばく群と非被ばく群における所見の違いの有無についても明らかにすると同時に、甲状腺がん症例の手術後の経過について前向きに解析することで、甲状腺がんの長期的予後についても明らかにする。
著者
高村 昇 林田 直美 松田 尚樹 中島 正洋
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

チェルノブイリ事故後、小児甲状腺がんが激増したが、甲状腺がんと甲状腺結節との発生頻度には地域ごとに強い相関があることも示された。そこで我々は、ジトミール州において、事故後のスクリーニングで甲状腺結節を指摘された住民(結節群)と、甲状腺異常を指摘されていない住民を対照群として追跡スクリーニングを行い、甲状腺結節の長期的予後についての臨床疫学研究を行った。その結果結節群では結節数、径ともに有意に増加していたのに対し、対照群では結節の発生は認められなかった。細胞診での悪性は結節群の3例のみであったが、悪性の可能性が否定できない判定困難例を併せるとその割合は対照群より有意に高かった。
著者
山下 俊一 高村 昇 中島 正洋 サエンコ ウラジミール 光武 範吏 鈴木 啓司
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

チェルノブイリ周辺の海外連携研究拠点並びに欧米共同研究機関と共に放射線誘発甲状腺がんの分子疫学調査を以下の項目で推進した。特に、国際社会における専門家交流と学術研究成果の新知見などの意見交換ならびに今後の調査研究推進について国際交流実績を挙げた。① 7月3~5日:ジューネーブにて開催されたThe 15th meeting of WHO REMPANに参加し、チェルノブイリと福島の教訓と今後の研究に向けた協議を行った。8月28~29日:カザフスタンでの第12回国際会議“Ecology, Radiation and Health”、11月22~23日:台湾での第32回中日工程技術検討会、平成30年2月3~4日:長崎での第2回3大学共同利用・共同研究ネットワーク国際シンポジウム、3月2日:ベラルーシにて開催された国際甲状腺がんフォーラム、3月5日:ロシアのメチニコフ国立北西医科大学での世界展開力強化事業に関する調印記念シンポジウム等に参加し、放射線と甲状腺に関する研究成果を発表した。② 共同研究者として平成29年5月~平成29年10月までベラルーシ卒後医学教育アカデミーよりPankratov Oleg先生を客員教授として招聘し、小児甲状腺がん全摘手術後の放射性ヨウ素内用療法の副作用研究を行い、平成29年11月~平成30年3月までロシア・サンクトペテルブルクより北西医科大学のVolkova Elena先生を客員教授として招聘し、内分泌疾患の臨床疫学研究と、日露両国における診断治療法の違いについての比較研究を行なった。チェルノブイリ周辺諸国より6名の研修生を7月13日~8月16日まで受け入れた。サンプリング収集と解析については、チェルノブイリ現地における大規模コホート調査研究を推進し、生体試料収集保存管理のバイオバンク構築維持を引き続き継続している。
著者
山下 俊一 大津留 晶 高村 昇 中島 正洋 光武 範吏 難波 裕幸
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

チェルノブイリ原発事故後激増した小児甲状腺がんの成因と長期健康影響を明らかにする研究目的で、すでに確立した海外拠点との学術交流による分子疫学調査を計画的に推進することができた。特にWHOやNCRP、EUなど欧米の放射線安全防護に係わる国際プログラムに積極的に参画し、低線量被ばくのリスク評価・管理について交流実績を挙げた。旧ソ連3ヶ国(ベラルーシ、ウクライナ、ロシア)における放射能汚染地域の住民データ、生体試料の収集から遺伝子抽出活動を継続し、放射線誘発甲状腺がん疾患関連遺伝子群の探索を行い、候補遺伝子のSNPs多型を解析した。その結果、DNA損傷修復酵素、がん抑制遺伝子群のSNPsの交洛関係を見出した。同時にChernobyl Tissue Bankという国際共同研究体制の運営に継続参画し、放射線誘発甲状腺がんの潜伏期や被ばく時年齢、病理組織像などの違いを詳細に検討し、臨床像の特徴についての解明を試みた。その結果、放射線被ばくによる甲状腺癌は非被ばくの散発性甲状腺がんと比較してもその予後や再発率に大差なく、通常の診断治療指針の遵守による生命予後の良さを明らかにすることができた。網羅的遺伝子解析の途中結果では疾患感受性遺伝子SNPs候補を見出している。上記研究成果は国内外の学会で報告すると同時に、WHOなどの低線量被ばく安全ガイドラインへの取組に保健医療行政上からも貢献している。放射線の外部被ばくによる発がんリスクだけではなく、放射性ヨウ素類の選択的甲状腺内部被ばくにより乳幼児・小児期被ばくのリスクが明らかにされ、今後の原発事故対策や放射線安全防護基準策定の基盤データの整備につながり社会的波及意義が大きいと期待される。
著者
齋藤 寛 柴田 義貞 高村 昇 渡辺 孝男 中野 篤浩 山下 俊一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故において、事故時に乳幼児であった世代から甲状腺がんが多発したことはよく知られているが、この詳細なメカニズムについてはまだ明らかになっていない。一方で、事故直後に放射能の除染を目的として鉛をはじめとする重金属類が空中から散布されたことが明らかになっており、すでに鉛の汚染状況についての地図も作成されている。しかしながら、これによる住民の健康影響については、これまで全く調査が行われていない。近年、in vitroにおいて、カドミウムやニッケルといった金属に曝露したcell lineにおける遺伝子不安定性が報告されており、放射線被ばくと同様、金属曝露も遺伝子不安定性の原因となることが示唆されてきている。そのため我々は、主にウクライナ放射線医学研究所との共同研究で、チェルノブイリ原発事故のもう一つの側面として、同地区における金属汚染の実態を明らかにし、さらにこれによる染色体レベルでの変異解明を目的としている。本年度は、昨年度までの解析結果に加えて毛髪を用いた微量金属の再評価を行ったが、毛髪と金属汚染レベルでは相関関係はみられなかった。その一方で血液中の微量元素については有意に上昇しているものがみられ、今後さらなる評価が必要であると考えられた。7月にはこれまでの研究成果の総括を行うために、研究代表者、分担者に加えてウクライナの海外共同研究者、さらに国内や中国、ベラルーシ共和国などからも専門家を招聘しての国際会議を開催し、グローバルな視点からの金属汚染の現状についての報告と今後の取り組みについて協議した。
著者
井手 昇太郎 森下 真理子 高村 昇
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.294-296, 2004-09

チェルノブイリ原発事故後,放射線ヨードの内部被ばくによると考えられる小児甲状腺癌の増加が,ベラルーシ,ウクライナ,及びロシア連邦において見られたが,その一方でポーランドでは甲状腺癌の増加は見られなかった. これは,ポーランドで事故直後に安定ヨウ素剤を内服させたことによる予防効果と考えられており,被ばく事故の際の安定ヨウ素剤内服の重要性を示すものである. 我が国でも1999年のJCO事故以降,原子力災害対策特別措置法が制定され,実際の放射線災害時の対策の一つとして被ばく直後の安定ヨウ素剤内服が計画されている. 一方で,予防内服の際,誤って過剰に安定ヨウ素剤を摂取した場合の対策も重要である. しかし,ヨウ素過剰内服時の血行動態と甲状腺ホルモンに対する影響についてはあまりデータがなく,その対策については未だ議論が続いている. そこで今回は,比較的大量の安定ヨウ素剤内服時の全身と甲状腺局所の血行動態の変化を,頚動脈脈波・上甲状腺動脈脈波・血圧・脈拍などの指標に加え,造影エコーにより解析・検討した.
著者
光武 範吏 高村 昇 サエンコ ウラジミール ログノビッチ タチアナ 高橋 純平
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に試料の収集のための業務委託契約を結んだベラルーシのミンスクがんセンターだが、その後も順調に収集が進んでいる。ミンスクにある長崎大学代表部を通して、事務手続きも問題なく行えている。昨年度同様、現地にてフォローアップ中の患者をリクルートし、採血した血液よりリンパ球を抽出、長崎大学へ輸送している。その後、長崎大学においてDNA抽出を行い、ほぼ全てのサンプルで質・量とも問題なくDNAを得ることができている。一部、検体不良のサンプルがあったが、情報をフィードバックし、プロトコールの確認作業を現地で行った。本年度は100例を収集し、予定通り順調に進行中である。本年度はまた、ベラルーシ、ブレスト州の内分泌疾患センターを訪問した。この地区は、検診受診数、甲状腺癌患者のフォローアップ数が多く、上記ミンスクがんセンターとは協力関係にある。担当医に研究の趣旨を説明し、同センターを通した試料収集への協力を依頼した。また、モスクワの内分泌センターを訪問し、講演を行った。センター幹部との現地打ち合わせも行い、ここでも協力を依頼した。さらにオブニンスクの医学放射線研究センターへも共同研究者を派遣し、打ち合わせを進めた。甲状腺癌発症に関連する一塩基多型については、解析対象についてのデータ収集と検討を引き続き行っているが、本研究課題で想定していた350-400例程度では十分な検出力が得られないものもあることが分かり、解析対象について当初より拡大するためには、今後の収集数の再検討も考慮する必要があると考えられた。
著者
林田 直美 高村 昇 鈴木 眞一 南 恵樹
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島県では、福島第一原子力発電所事故後、小児を対象とした甲状腺超音波検査が行われている。この検査では、約半数の小児で小さな結節やのう胞が認められているが、小児における甲状腺所見の頻度についての報告はないため、日本人一般における甲状腺超音波検査を行った。その結果、対象者の約半数に甲状腺のう胞が認められ、結節は0.7%にみられ、福島県と同様の頻度であった。成人での調査では、これより多い頻度で結節を認めた。甲状腺を4年間観察したところ、大半の小児でのう胞の有無や大きさが変化することがわかった。
著者
高村 昇 松田 尚樹 林田 直美 中島 正洋 折田 真紀子 柴田 義貞
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故では、放射性ヨウ素の内部被ばくによる甲状腺がんの増加が認められたが、それ以外の疾患については増加が認められていない。一方2011年の福島第一原子力発電所事故後、初期の食品管理によって内部被ばくの低減化が図られたものの、住民の間には放射性ヨウ素や放射性セシウムの内部被ばくによる健康影響への懸念が広がった。今後甲状腺がんのみならず、甲状腺の良性疾患に対する不安が広がることも予想される。そこで本研究では、チェルノブイリにおける放射性ヨウ素の内部被ばくによる甲状腺良性疾患の増加があるかどうかについて、疫学研究を行った。
著者
熊谷 敦史 メイルマノフ セリック 大津留 晶 高村 昇 柴田 義貞 山下 俊一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現地で得られたセミパラチンスク周辺地域での検診結果情報をもとに、検診結果と精密検査・治療の現状把握を行った。平成22年には、甲状腺結節が認められた場合に治療にあたるセメイ州立がんセンターから病理医を招へいし、同時に同センターで切除された甲状腺腫瘍標本を用いて、病理組織解析、53BP1蛋白の発現解析を行った。平成23年には、セメイ州立がんセンターから病理医、診断センターからデータベース担当者を招へいし、標本追加して病理解析による放射線発がん影響の解析を進め、甲状腺精密検査結果データと、疫学センターからのカザフスタン全土の癌疫学データを合わせ旧セミパラチンスク核実験場周辺地域の発がん傾向分析をまとめる予定であった。しかしながら、平成23年3月11日に発生した東日本大震災に引き続く東京電力福島第1原子力発電所事故のため、研究代表者ならびにメイルマノフ・セリックをのぞく研究分担者は全て被ばく医療専門家として福島県に繰り返し派遣され支援にあたってきたため、研究期間内に予定された研究完遂が困難となった。
著者
森田 直子 高村 昇 工藤 崇
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本課題研究期間において、小型加速度・温度・心電図感知機能に線量モニタリングを搭載したの個人用モニタリングセンサーの開発を行い、システム構築を完成させた。このモニタリングセンサーを用いて、2011年3月11日発生した東北地方太平洋沖地震に端を発して発生した福島第一原子力発電所事故における本学からの救援活動の際、現地で活動した本学から派遣の医療関係者の生体情報管理に応用した。また、本学内に設置の精密型ホールボディ-カウンターを用いて、福島に滞在した長崎からの派遣者の内部被ばくを測定した。特に、事故後初期に測定した被験者からは、短半減期のヨウ素-131をはじめ、ヨウ素-132やテルル-132も検出され、初期の段階での内部被ばくの状況を判断するための非常に重要な結果が得られた。
著者
草野 洋介 高村 昇 大園 忠幸 青柳 潔 安部 恵代
出版者
長崎ウエスレヤン大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ホモシステイン代謝に関連する酵素であるMTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子多型が、動脈硬化の生理的多型性に与える影響を調べるために、MTHFR遺伝子型の解析、および動脈硬化進展度を血管内膜の複合体厚(IMT)ならびに脈波伝搬速度(PWV)により測定を行った。また、近年、動脈硬化の進展過程における炎症反応の関与の重要性が指摘されおり、特に、血清高感度CRP(hs-CRP)は血管障害の独立した危険因子になることが疫学研究により見出されている。動脈硬化の進展に関する全身的共関の一要素として、血清脂質値などの血清生化学検査に加え、hs-CRPの計測を行った。その結果、現在動脈硬化の推移を把握する上で最も鋭敏であるとされる高感度CRP(hs-CRP)や血漿葉酸の濃度は若年者の段階からすでに性差が存在すること、頚部超音波検査での頚動脈内膜・中膜複合体厚(Carotid Intima Media Thickness: CIMT)は加齢にしたがって肥厚が見られ、男女差もそれにつれて明確になってくることなどを示した(Hara et al. Clin Chem Lab Med 2006)。さらに最近我々は、日本人中高年者におけるホモシステインとCIMTの決定因子についての解析を行い、その結果CIMTは加齢、性に加えて収縮期血圧が独立した因子であることを示した(Takamura et al. submitted)。このことは動脈硬化の予防における、適切な血圧のコントロール、特に収縮期血圧の適切なコントロールが重要であることを示すものである。現在これまでに得られた研究データを下に動脈硬化の生理的多型性にMTHFR遺伝子多型が与える影響を解析中である。
著者
高村 昇
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.87, pp.161-164, 2012-09-25

1986年4月26日未明,ウクライナの首都キエフから北へ130kmの地点にあるチェルノブイリ原子力発電所4号炉が爆発炎上し,人類史上最悪の放射線災害が発生した.当時の東西冷戦構造のもと,正確な情報は世界へ発信されず,目に見えない放射線に対する恐怖と相まって,世界レベルでのパニックが引き起こされた.事故に対して本格的な国際協力が開始されたのは,ゴルバチョフ大統領のペレストロイカ(経済改革)やグラスノスチ(情報公開)政策がソ連解体へと歩を進めていた1990年以降であった.チェルノブイリ周辺地区住民,ならびに発電所の作業者における健康影響についての科学的知見は,今後の福島県民の健康をどのようにして見守っていくかを考えた際,重要なものとなる.本稿ではチェルノブイリ事故による健康影響を概説しながら,チェルノブイリにおける住民検診とその問題点について考察する.