著者
大城 真也 大村 忠寛 福島 武雄
出版者
医学書院
雑誌
Brain and Nerve 脳と神経 (ISSN:00068969)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.807-812, 2006-09-01

症例は74歳男性。飲酒後に浮動性めまいと右難聴が突然出現し耳鼻咽喉科を受診した。突発性難聴が疑われステロイドが投与されたが,その後めまい症状と難聴が増悪し,右顔面のしびれ感と口角下垂,複視も出現したため,頭蓋内病変を疑われて当科を紹介された。来院時には左注視方向性眼振・右顔面知覚障害・右外転神経麻痺・右末梢性顔面神経麻痺・右感音性難聴および小脳失調が確認された。頭部MRIでは右中小脳脚を中心に小脳片葉を含む散在性の虚血巣が確認され,前下小脳動脈領域の血栓症と診断された。突発的に片側性難聴をきたす症例の場合には,一般に内耳性疾患が疑われる。しかし類似した症状は脳血管障害でも生じることがあり,臨床的に突発性難聴が疑われた症例でも,脳血管障害の危険因子を有する場合には,前下小脳動脈症候群を念頭においた注意深い神経症状の観察と早期の画像診断が重要と考えられた。