著者
大城 稔
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

○研究目的と方法:リーシュマニア症は、10種類以上の病原性リーシュマニア原虫に起因し、感染原虫種の判別は治療方針の選択に重要である。国内では、沖縄県出身者の多い中南米を含む外国からの輸入感染症として問題となっている。最近我々は、患部組織から原虫cytochrome b遺伝子をPCR増幅し塩基配列を決定することで、原虫種を迅速に判別する方法を世界に先駆けて確立した。本研究では、(1)この方法を用いて中南米諸国の患者の病原原虫種を判別し、その地理分布を把握すること、(2)帰国・入国者が発症した際に病原原虫の種を判別して治療方針決定に役立て、地理的分布との整合性を検証することで中南米からの輸入感染症対策の一助とすることを目的とした。○研究成果:(1)これまでに、アルゼンチンおよびエクアドルでリーシュマニア症の症状を呈した患者のうち、それぞれ18例および14例について患部より原虫cytochrome b遺伝子をPCR増幅により検出し、検出例について塩基配列の決定と、すでに蓄積した10種類以上の病原性原虫標準株の塩基配列との比較による原虫種の解析を終えている。原虫種としては両国ともL.(V.)braziliensisが一位を占めL.(V.)guyanensisがそれに続く頻度を示したが、驚いたことに、これまでWHOのコレクションにもない新種と思われる原虫種が全症例中2割近くに見出された。これはエクアドルで特に多く、L.(V.)braziliensisとL.(V.)guyanensisの中間型とも考えられ、今後の大きな課題である。一方、(2)国内各地から輸入リーシュマニア症疑いの症例が紹介され、関東の症例はL.(L.)mexicanaと診断したが、東海地方の2例は原虫陰性であった。また、イラクに駐屯していた自衛隊員の症例も陰性と診断した。