著者
波多野 和夫 大塚 俊男 濱中 淑彦
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.69-72, 1996-01-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

著しい語間代(Logoklonie)の言語症状を呈した初老期発症のAlzheimer病の1例の症例報告を行った. 語間代はKraepelin(1910)の教科書に記載された有名な現象であるが, これまでほとんど取り上げられることなく, 議論の対象としては等閑視されて来たといってよい. 我々は, 自験例との臨床的経験を通じて, この語間代という言語症状の輪郭を明らかにし, その現象と発生に関わる要因として, (1)音節レベルの水平性反復, (2)脳器質性言語障害, (3)発話発動性の保存, (4)精神運動性解体としての固執性症状, (5)前頭葉損傷との関係, (6)経過の問題という特徴を取り上げ, その意味を考察した. 併わせて類似の病的言語現象として, (a)吃音, (b)子音・母音再帰性発話, (c)部分型反響言語を挙げ, これらとの鑑別診断についても考察した