- 著者
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中島 昌弘
大塚 幸雄
- 出版者
- 一般社団法人 日本内科学会
- 雑誌
- 日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.2, pp.107-112, 1965
血液凝固過程において,血小板が重要な役割を演ずることは周知の事実である.しかしそのざい,血小板が如何なる機序にまつて作用するやは現在なお充分には究明されていない.著者らはこの問題を形態学的な面から検索することを企て,多血小板血漿にカルシウムを再加して凝固を進展せしめ,経過を追つて血小板の微細構造を観察した.微細構造上著明な変化を示したのはgranulomer αおよびミトコンドリアである.すなわち前者は初め膨大し,その数も増加し,後減少,消失する.ミトコンドリアも初め膨大し,後減少,消失する.かくて凝固の完結期には,血小板の多くは無構造様となる.右の事実からgranulomer αおよびミトコンドリアに血小板凝血因子の生成或いは局在性が示唆されると思われる.凝固の終末段階になると凝塊中の血小板の膜が消失し,血小板としての形態が判別出来ないようになる。血餅退縮にかんする重要な問題の一つがこゝに伏在すると考えられる.なお血小板にトロンビンを作用させたさいにも, granulomer αおよびミトニンドリアは前記したところと同様の変化を示すが,凝塊を作る血小板の膜は長く保全せられる.