- 著者
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大塚 昇三
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究科
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.1, pp.167-182, 2015-06-11
フーリエには情念が世界をかたちづくるという根本思想がある。もし人間が情念にしたがって自由に行動すれば情念の引力と斥力が働いて,歩兵隊の陣形のように中心集団と,その両側に中心集団と競い合う二つの極集団を形成する。この中心と両極の構造をフーリエは系列とよぶ。情念が,情念みずからの存在や働きを,人間の集団形成の行動を通して系列構造という目にみえるかたちであらわす,ともいえる。そして神がこの系列構造を原型にして世界のいっさいをかたちづくる。情念が自由ならいっさいが系列構造を分有して統一がうまれ,世界は調和する。情念が抑圧されると系列構造に歪みが生じ,統一が乱れて世界は不和になる。これがフーリエの根本思想である。本稿では,「文明のカースト」を中心に,このカーストの階層構造と系列構造との対応関係を確認する。この確認作業をもって,フーリエが系列といういわば事物の認識パターンにそって外界からの情報を分類・編集し,かれ独自の鍵になる観念を成形しているという筆者のフーリエ解釈の傍証としたい。