著者
岡田 崇之 杉田 典子 大塚 明美 青木 由香 高橋 昌之 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.344-352, 2013-08-31 (Released:2017-04-28)

目的:歯周炎に対しスケーリング・ルートプレーニングを含む動的治療を行った後に残存したポケットに歯周病原細菌または炎症の継続が認められる場合,さらなる進行のリスクが高い.セルフケアとして,ブラッシングに薬剤を含む歯磨剤を併用し殺菌・消炎を図ることは,歯周炎の進行抑制に効果的と考えられる.歯磨剤ジェルコートFは,0.05%塩酸クロルヘキシジン,β-グリチルレチン酸,フッ化ナトリウム,ポリリン酸ナトリウムを含有している.今回,歯周治療後の残存歯周ポケットに対するジェルコートFの効果を調べた.材料と方法:対象は20歯以上を有する男女で,慢性歯周炎に対しスケーリング・ルートプレーニングを含む動的治療終了後1カ月以上経過し,2歯以上に6〜7mmの残存ポケットを有する20名とした.無作為化二重盲検法にて2群に分け実験群はジェルコートFを,コントロール群は塩酸クロルヘキシジン,β-グリチルレチン酸を除いたコントロール剤を使用した.残存ポケットを有する1歯を歯肉溝滲出液(GCF),ほかの1歯を細菌検査対象とし,GCF中のAST, ALT,縁下プラーク中のPorphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Tannerella forsythiaおよびTreponema denticolaを測定した.歯周病検査を行った1週後(0w)にGCFと縁下プラークを採取し,次いでポケット内に歯磨剤を注入した.患者は毎日歯磨剤を使用してブラッシングを行い,就寝前にリテーナーにて歯磨剤を10分間適用した.4週後,同様の検査を行い結果を解析した.成績:実験群,コントロール群とも有害事象は認められなかった.ベースラインにおいて年齢,男女比,ポケット深さ,細菌レベル,GCF成分の差はなかった.術前術後比較では,実験群のみ対象歯のPlaque Index (PlI)とGingival Index (GI)が減少した.それ以外に有意な変化はなかった.また,術前術後の変化量に群間差はなかった.年齢・性別の影響を調整した線形回帰分析では,GIのみジェルコートFの効果が認められた.結論:リテーナーとブラッシングを併用してジェルコートFを4週間使用した結果,歯周治療後の残存ポケットの歯周病原細菌レベルおよび歯肉溝滲出液成分に有意な変化は認められなかった.しかし,臨床所見における縁上プラークおよび歯肉の炎症を減少させる可能性が示唆された.