著者
加藤 承彦 越智 真奈美 可知 悠子 須藤 茉衣子 大塚 美耶子 竹原 健二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.321-337, 2022-05-15 (Released:2022-05-24)
参考文献数
50
被引用文献数
1

目的 近年,父親の育児参加に対する社会の関心が高まりつつある。しかし,父親が積極的に育児参加することによってどのような影響があるのかあまり明らかになっていない。本研究では,我が国で主に2010年以降に報告されている父親の育児参加に関する研究の知見についてレビューを行い,日本社会において父親の育児参加が母親,子ども,父親自身に与える影響に関する知見をまとめた。さらに,今後の課題についても検討を行った。方法 医学中央雑誌文献データベース,JSTPlus,JMEDPlusを用いて,「乳幼児関連」,「父関連」,「育児関連」のキーワードで2010年以降に掲載された和文原著論文の検索を行った。また,PubMedを用いて,「father or paternal」,「childcare OR co-parenting OR involvement」で英文原著論文の検索を行った。また,日本国内の研究,乳幼児期がいる家庭を対象,質問紙を用いた量的研究,2010年以降に掲載などの条件を設定した。これらの条件を満たした26編の論文(和文22編,英文4編)について,対象者(母親,父親,両者),育児参加方法の内容,アウトカムの内容,得られた知見などについて検討を行った。結果 父親の育児参加の影響に関する過去10年間の和文論文および過去20年間の英文論文の文献レビューの結果,次の2点の傾向が見られた。第1点目として,母親が父親の積極的な育児参加を認知している場合,母親の育児負担感が低く,幸福度が高い傾向が見られた。また,子どもの成長においても,母親が父親の積極的な育児参加を認知している場合,子どもの健康や発達(怪我や肥満の予防)に良い影響を及ぼしている可能性が示唆された。しかし,第2点目として,父親が自分自身で評価した育児参加の度合いは,母親の負担感などとは直接に関連しない可能性が示唆された。父親の育児参加が父親自身に与える影響(QOL等)は,研究の数が少ないこともあり,一貫した傾向は見られなかった。また,父親の育児参加の評価の方法がそれぞれの研究で異なっていた。結論 今後,父親の育児参加が積極的に推奨されると同時に,その影響についても社会の関心が高まると推測される。今後の課題として,父親の育児参加の量および内容をどのように適切に評価するのかに関する議論を深める必要が示唆された。
著者
加藤 承彦 越智 真奈美 可知 悠子 須藤 茉衣子 大塚 美耶子 竹原 健二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-040, (Released:2022-03-16)
参考文献数
50
被引用文献数
2

目的 近年,父親の育児参加に対する社会の関心が高まりつつある。しかし,父親が積極的に育児参加することによってどのような影響があるのかあまり明らかになっていない。本研究では,我が国で主に2010年以降に報告されている父親の育児参加に関する研究の知見についてレビューを行い,日本社会において父親の育児参加が母親,子ども,父親自身に与える影響に関する知見をまとめた。さらに,今後の課題についても検討を行った。方法 医学中央雑誌文献データベース,JSTPlus,JMEDPlusを用いて,「乳幼児関連」,「父関連」,「育児関連」のキーワードで2010年以降に掲載された和文原著論文の検索を行った。また,PubMedを用いて,「father or paternal」,「childcare OR co-parenting OR involvement」で英文原著論文の検索を行った。また,日本国内の研究,乳幼児期がいる家庭を対象,質問紙を用いた量的研究,2010年以降に掲載などの条件を設定した。これらの条件を満たした26編の論文(和文22編,英文4編)について,対象者(母親,父親,両者),育児参加方法の内容,アウトカムの内容,得られた知見などについて検討を行った。結果 父親の育児参加の影響に関する過去10年間の和文論文および過去20年間の英文論文の文献レビューの結果,次の2点の傾向が見られた。第1点目として,母親が父親の積極的な育児参加を認知している場合,母親の育児負担感が低く,幸福度が高い傾向が見られた。また,子どもの成長においても,母親が父親の積極的な育児参加を認知している場合,子どもの健康や発達(怪我や肥満の予防)に良い影響を及ぼしている可能性が示唆された。しかし,第2点目として,父親が自分自身で評価した育児参加の度合いは,母親の負担感などとは直接に関連しない可能性が示唆された。父親の育児参加が父親自身に与える影響(QOL等)は,研究の数が少ないこともあり,一貫した傾向は見られなかった。また,父親の育児参加の評価の方法がそれぞれの研究で異なっていた。結論 今後,父親の育児参加が積極的に推奨されると同時に,その影響についても社会の関心が高まると推測される。今後の課題として,父親の育児参加の量および内容をどのように適切に評価するのかに関する議論を深める必要が示唆された。