著者
大塚 誠也 黒崎 奏澪 小川 充洋
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.472, 2017

<p>近年、Oculus Riftや PlayStation VRなどの3Dヘッドセットを用いた比較的安価なバーチャルリアリティ (VR) 環境が実現され、普及しつつある。VR 鑑賞中やVR環境下での労働時の生体計測のために、本研究では 3D ヘッドセットに組み込める生体計測を提案する。ヘッドセットを着用するだけで生体計測が可能となれば、VR環境下では必ず生体情報を取得可能となる。今回、最初の試みとして、VRヘッドセットに内蔵可能な光電脈波プローブを用いた脈波計測を行ったので報告する。光電脈波計測のために、小型の反射型プローブを開発し、被験者の前額部から脈波の導出を試みた。被験者は、光電脈波計測と同時にVRヘッドセットを着用した。計測に用いる光源には緑色LEDと近赤外LEDを試行した。結果、いずれの波長においても光電脈波を観察することができたが、近赤外を用いた光電脈波では、被験者の自発的な瞬目時に大きなアーチファクトを観察し、脈波を観察することができなかった。一方、緑色光電脈波においては、瞬目時においても安定した計測を達成することができた。また、緑色光電脈波において、VRモニタの明滅や被験者の呼吸などの影響を受けずに、脈波ピークを観測することが可能であった。以上の結果から、VRヘッドセットを着用しただけで計測を意識することなく光電脈波を計測可能なシステムの可能性が示されたものと考えられた。本研究の一部はJSPS科研費 15H02798の助成を受けたものです。</p>