著者
大塚 郁夫 菱本 明豊
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.134-140, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
26

双生児研究などから,自殺には生来の遺伝負因が存在すると考えられている。自殺行動の致死性が高いほど遺伝負因も強くなることが示唆されており,自殺の生物学的機序の解明には自殺完遂者を対象とした研究が非常に重要である。しかしながらその試料は入手自体が困難なため,相応のサンプル数を要するゲノムワイド関連解析(genome‐wide association study:GWAS)などの報告は他の精神科領域に比して大きく遅れている。筆者らは遺族の深いご理解の下,世界最大規模の自殺完遂者DNA試料を保有し,日本人自殺完遂者を対象としたGWASを初めて遂行するなど,「日本人の自殺」に関する興味深い遺伝学的知見を得てきた。それらを中心に自殺の遺伝学的研究の現況を紹介する。