著者
大宮 秀淑 松㟢 由莉 宮島 真貴
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学心理学紀要 = Bulletin of Faculty of Psychology Sapporo Gakuin University (ISSN:24341967)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.1-12, 2019-10-31

本研究は,前頭葉/実行機能プログラム(Frontal/Executive Program:FEP)を使用した介入によってMCIの認知機能に改善が認められるか否かを検討することを目的とする。対象は80代女性であり,認知機能に関して覚える事が苦手になったなど記憶力低下についての自覚があった。症例に対して1対1で週2回,1回約1時間ずつのFEPを22セッション行った。評価はMoCA-Jを用いてMCIと判断した上で,介入前後に統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J),ウィスコンシン・カード分類テスト(WCST)および持続的注意集中力検査(CPT)を実施した。結果として,介入前はBACS-Jにおいて言語流暢性および数字順列の成績低下が顕著であったが,介入後は総合得点,言語性記憶およびロンドン塔課題に大きな改善が認められた。WCSTやCPTの誤答数も減少し,MCIへのFEPの適用可能性が示唆された。他の精神疾患と比して,言語流暢性の改善が十分ではない特徴的な結果も得られた。今後は症例数の増加およびMCIの認知機能の特異性に関する検討が必要と考えられる。
著者
大宮 秀淑
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学心理学紀要 = Bulletin of Faculty of Psychology Sapporo Gakuin University (ISSN:24341967)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.35-56, 2018-10-31

本研究の目的は,箱庭療法で使用される砂の色が異なる箱庭作品に違いが認められるか否かを検討することである。対象は大学生55名(男子:22名,女子:33名)である。対象者は2種類の砂(白砂・茶砂)を用いて各砂色につき1回ずつ箱庭作品を制作した。制作終了後,質問紙による回答を求め作品の印象を訊ねた。結果として,白砂による作品は未熟な印象を与え作品に対する満足度が低いことが明らかとなった。白砂という素材が持つ様々かつ曖昧なイメージを刺激する働きによる影響が認められた。イメージ内容には性差が認められ,男子学生は否定的イメージを持つことが示された。一方,茶砂に関しては作品に対する満足感が高く,性差が認められるとともに茶砂が持つ大地の役割や母性とのつながりが示唆された。制作回数の効果については,1回目よりも2回目の作品の方が成熟度に関して深まりが感じられる結果となった。他の砂色に関する比較検討が今後の課題である。