著者
金古 喜代治 大山 龍一郎
出版者
九州東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

平成5年と平成6年度の2ヶ年間において,6.6kV級の高圧CVケーブルの絶縁劣化診断エキスパートシステムの構築とシステムの実用化に関して研究を行った。本システムは,メインプログラムがC言語で記述され,推論部分はAI用のコンパイラ言語OPS83の後ろ向き推論を採用し,絶縁特性値による推論過程にはファジィ推論を用いている。当初は停電試験による絶縁特性値を用いて絶縁診断を実行するプロトタイプのエキスパートシステムを構築して,専門家による絶縁診断結果に対してかなり良好な診断が可能であった。しかしながら,停電試験を実施するには長時間を要し,その間は系統を停止する必要があることと,絶縁特性値のみで劣化診断を行うということはトレンド管理の面から好ましいことではない。そこで,この欠点を補うために劣化状態の目視観察についての知識ベースを専門家からヒアリングを行って確立し,診断精度を向上させた。また,活線状態でシステムが応用できるように,活線絶縁抵抗値と活線シース絶縁抵抗値により絶縁診断を実行できるようにシステムのプログラムを変更した。ケーブルの製造形式や布設条件,布設年数によっても絶縁の劣化状態が異なるために,これらの劣化基準を考慮してシステムをこうちくした。その結果,本エキスパートシステムを用いて絶縁診断結果は,専門家により判定した診断に比較して84%の確度で一致するというシステム評価結果を得ることができた。さらに,測定値を入力してシステムを稼働させるのではなく,自動的に常時診断とトレンド管理を可能にするために,(株)フジクラの好意により同社製の活線絶縁診断装置にGP-IBケーブルを介してデータを自動入力できるように,エキスパートシステムを改良した。このように,実用化したシステムを実系統において確認するために,ある工場に布設されている6系統の稼働ケーブルを使用して実用化試験を実施して完成させた。