著者
村田 浩平
出版者
九州東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,1992年にコンケン大学と九州東海大学間で調印された学術交流協定に基づき,タイ国の環境保全型農業における生物的防除に関する研究を1999年から2001年の3年間に渡りタイ国東北地方において実施したものである.研究期間中,九州東海大学からのべ4名を派遣し,調査を実施すると共にコンケン大学からのべ4名を招聰し,九州東海大学において調査法に関する研修を実施した.タイ国では,環境保全型水田,野菜圃場における害虫および天敵相に関する調査と,穀物貯蔵庫におけるポストハーベスト害虫の被害状況に関する調査を実施し,以下の結果を得た.1.タイ国東北部の天水田における有力天敵の1つであるキクヅキコモリグモは,雨期に冠水する水田では個体数が少ないこと,コンケン周辺の灌慨地域に個体数が多いこと,個体数の増減に水管理が大きく影響を及ぼしていることを明らかにした.2.タイ国東北部の環境保全型水田における主要害虫相を明らかにすると共に,天敵相が多様であることを明らかにした.3.タイ国東北部におけるウンカ・ヨコバイに対する捕食寄生性天敵の寄生率は,概して低いが,地域差も見られることを明らかにした.4.トビイロウンカ寄生菌を同定し,天敵としての評価に関する実験を実施し,トビイロウンカ防除に有望な天敵であることを明らかにすると共に,簡便な培養法を開発した.5.ポストハーベスト害虫相に関する調査を実施し,タイ国東北部のコメの主要害虫による被害状況を明らかにすると共に,被害の原因として,農村部のコメの乾燥および仮集積所における貯穀害虫の侵入防止および防除が重要であることが明らかになった.
著者
園田 義人 佐松 崇史
出版者
九州東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、振動膜等の物体を一切使わず、レーザ光により音を直接検出する方法、あるいは光の中から音情報を取り出す方法(総称:光波マイクロホン)の技術確立を目的とした開発研究を実施した。同法は、空中音波の位相変調作用により発生した極微弱回折光を検出することで可聴音を検出・再生しようとする試みである。微弱回折光の検出には光学情報処理システムを用いるが、光学システム(特に音検出部にあたる光ビーム構造)をどう組めば可聴音の検出が最適化されるか、あるいは任意のニーズに適う音受信特性が実現できるか、などについては未解明の部分が多い。本研究では、光波マイクロホンの中核部である光学情報処理部及び音検出アンテナ部の理論的・実験的検討を行い、それらを総合した光波マイクロホンの技術確立などを行った。主要な内容を要約すると、次のようになる。レーザビーム伝送路(レンズ群からなる計測光学系)に音が入射した場合、入射点とフーリエ変換の関係にある位置に光検出面を置くことにより音信号が有効に取り出せる。音入射領域のレーザビームウェストのスポットサイズは音波長に近い方が信号強度が大きくなる。実用上は、数mmのビーム直径が使いやすい。音検出部の光ビームの構成と音受信特性を、主に単純反射形及び左右反転反射形ダブルビームを中心に検討し、光ビームの構成(1〜3次元的)を変化させることで、指向性、信号強度増幅などを変化させることができることなどを示した。
著者
岩崎 洋一郎
出版者
九州東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

交差点付近のビル屋上に設置したビデオカメラにて歩行者交通流を撮像し、その映像から画像処理によってある瞬間の横断歩道上に散開した歩行者の空間的な分布を得る。次に、その1コマの分布パターンをエントロピーによって定量化し、歩行者交通需要をマクロに推定する手法をこれまでに提案した。本研究では、そのエントロピーの変動に感応して歩行者青信号時間を調整する新たな歩行者交通信号制御方式を提案した。これは、エントロピーの値によって歩行者交通需要を推定し、毎サイクルその値に応じて歩行者青時間を最適に調整する制御方式である。本方式を適用することによって、不要な歩行者青時間を排除でき、特にスクランブル交差点ではそこを起点として延伸する自動車交通渋滞の緩和が期待できる。なお、歩行者交通需要が減少し青信号から青点滅信号へ切り替える際のエントロピー閾値について実画像処理結果およびシミュレーション実験結果を基に検討した。その結果、通常の横断歩道では2.5bits、スクランブル交差点では3.0bitsが最適なエントロピーの閾値であることが判明した。次に、交通信号制御の最小周期は1秒であることから、より処理時間の掛からない簡易な画像処理・エントロピー計測手法を提案した。その結果、PentiumIII600MHz程度のCPUを搭載したパーソナルコンピュータと画像処理ボードにて、画像処理およびエントロピー算出を1秒以内で完了できることが示された。さらに、画像処理によって歩行速度の極端に遅い歩行者(交通弱者)を検出し、歩行者交通需要が途絶え、エントロピーが減少した後も、その歩行者が安全に横断できるだけの時間を青点滅信号の延長によって確保する機能を付加した歩行者交通信号制御方式も提案した。
著者
金古 喜代治 大山 龍一郎
出版者
九州東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

平成5年と平成6年度の2ヶ年間において,6.6kV級の高圧CVケーブルの絶縁劣化診断エキスパートシステムの構築とシステムの実用化に関して研究を行った。本システムは,メインプログラムがC言語で記述され,推論部分はAI用のコンパイラ言語OPS83の後ろ向き推論を採用し,絶縁特性値による推論過程にはファジィ推論を用いている。当初は停電試験による絶縁特性値を用いて絶縁診断を実行するプロトタイプのエキスパートシステムを構築して,専門家による絶縁診断結果に対してかなり良好な診断が可能であった。しかしながら,停電試験を実施するには長時間を要し,その間は系統を停止する必要があることと,絶縁特性値のみで劣化診断を行うということはトレンド管理の面から好ましいことではない。そこで,この欠点を補うために劣化状態の目視観察についての知識ベースを専門家からヒアリングを行って確立し,診断精度を向上させた。また,活線状態でシステムが応用できるように,活線絶縁抵抗値と活線シース絶縁抵抗値により絶縁診断を実行できるようにシステムのプログラムを変更した。ケーブルの製造形式や布設条件,布設年数によっても絶縁の劣化状態が異なるために,これらの劣化基準を考慮してシステムをこうちくした。その結果,本エキスパートシステムを用いて絶縁診断結果は,専門家により判定した診断に比較して84%の確度で一致するというシステム評価結果を得ることができた。さらに,測定値を入力してシステムを稼働させるのではなく,自動的に常時診断とトレンド管理を可能にするために,(株)フジクラの好意により同社製の活線絶縁診断装置にGP-IBケーブルを介してデータを自動入力できるように,エキスパートシステムを改良した。このように,実用化したシステムを実系統において確認するために,ある工場に布設されている6系統の稼働ケーブルを使用して実用化試験を実施して完成させた。
著者
松田 靖
出版者
九州東海大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

Kojima and Kawaguchi(1989)の研究により,ディプロスポリーによる高頻度な条件アポミク1・であることが判明している花ニラ用栽培品種‘フラワーボール'‘テンダーポール'を供試材料とし,胚の単為発生期に特異的に発現する遺伝子群のクローニングを試みた.まず,両品種における胚の単為発生時期を特定化するため,花器官の形態的調査,ならびにパラフィン切片法による未受精胚の発育状況を調査した.その結果,2品種ともに,他のAllium属種と同様に,雄性先熟であり,開花5日後の柱頭成熟期に卵細胞の分裂が開始していることが判明し,この時期を単為発生初期とした.本時期に特異的に発現する遺伝子のクローニングを行うために,開花当日および成熟期(完熟種子)を加えた3つの異なる発育ステージにある胚(開花当日・単為発生期は胚珠)からnIRNAを単離し,RT-PCRによりcDNAを合成した.その後,ディファレンシャルディスプレイ法を使用し,単為的な胚発生初期にのみ特異的に形成するバンドの選出を行った.両品種において,それぞれ単為発生胚初期に特異的な複数のバンドが検出され,得られたバンドの塩基配列決定を順次行っている.塩基配列決定後,既知の遺伝子との相同性を確認し,これまでに報告されていない新規の遺伝子群を選抜するともに,in situハイブリダイゼーションにより組織特異性を調査することで,単為発生に関与する遺伝子群の特定を図る予定である.
著者
松田 靖
出版者
九州東海大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

アポミクシスの発現は一般に,高次倍数性個体で認められ,低次倍数性個体では抑制されることが知られている.そこで,アポミクシスの一様式であるデイプロスポリーの発現様式解明を目的とし,ニラを用いた半数体の誘導ならびに同形質に関連する,特に単為発生期に発現する遺伝子(群)の単離を試みた.半数体獲得を目的として,既にアポミクシス率が報告されているニラ(2n=4X=32)の3品種('テンダーポール','フラワーポール'および'ワイドグリーン')を供試材料とし,未受粉の5,075胚珠をB5ホルモン無添加培地上で培養したところ,4.49%に相当する227胚珠で胚形成が認められた.胚形成頻度を各品種間ならびに由来種子(多胚性種子あるいは単胚性種子)で比較したところ品種間で有意な差異が認められ,'ワイドグリーン'で最も効率的な胚形成が確認された.その後,順化にまで至った個体の倍数性をフローサイトメーターにより調査したところ,それらは全て4倍体であり,倍数性を維持していたことが明らかとなった.このように半数体獲得には至らなかったため,特定の発育ステージに発現するmRNAを比較することで,単為発生期に発現する遺伝子(群)の単離を試みた.花ニラ用栽培品種である'テンダーポール'を供試し,胚形成が認められない開花直後,単為発生胚の形成が開始される開花4日後の胚珠および種子内の成熟胚からmRNAを抽出し,これらをサンプルとしてディファレンシャルディスプレィ法による単為発生期に特異的に発現する遺伝子(群)の探索を行うこととした.現在,上流プライマー24種,下流プライマー9種の計216組み合わせで反応を行い,増幅産物による比較を行っている.