著者
大岡 宏造
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

高等植物やシアノバクテリアの光化学系I反応中心の構築原理を本質的に理解するため、緑色イオウ細菌やヘリオバクテリアのもつタイプ1反応中心の構造と機能に関する研究を行った。この2年間の成果は以下の通りである。1.2次電子受容体A_1(キノン)の探索:我々はヘリオバクテリアHeliobacterium modesticaldumの反応中心において、キノンに由来すると考えられるESRシグナルを検出することに初めて成功した。現在、HPLCおよびマススペクトル解析によるキノンの化学種同定を試みている。一方、分子遺伝学的研究に適した緑色イオウ細菌Chlorobium tepidumを用い、キノン合成に関与する遺伝子menG破壊株作成を試みた。menGはSAMを基質とするメチル基転移酵素であり、その破壊株は閃光照射後のキネティックスの変化が期待できる。しかし残念ながら、破壊株は得られなかった。2.イオウ酸化経路についての解析:緑色イオウ細菌は電子源としてイオウ化合物を利用する。イオウ酸化経路がどのように光合成電子伝達経路とリンクしているかを調べた。具体的にはCh1.tepidumを用い、CycA(cyt c-554)の欠失株(ΔcycA)、S_2O_3^<2->酸化に関与する多成分酵素系のひとつSoxBの欠失株(Δsoxβ)、およびその二重欠失株(ΔcycAsoxB)を作製し、その電子伝達経路と硫黄酸化経路の解析を行った。その結果、CycAはS_2O_3^<2->酸化経路の最終電子受容体である可能性が最も高いが、CycAを介さない副次的な経路の存在についても示唆された。さらにS^<2->とS_2O_3^<2->の酸化によって得られた電子は、それぞれ個別の光合成電子伝達経路で反応中心に伝達されることが明らかとなった。