著者
神谷 厚輝 大崎 寿久 竹内 昌治
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.441-449, 2015-06-05 (Released:2015-07-07)
参考文献数
27

細胞膜は,情報伝達や細胞間の情報交換の場である.このような細胞内外での物質のやり取りは,チャネルやレセプターのような膜タンパク質が主にかかわっている.膜タンパク質は,ガン等の疾病と関連しているため,膜タンパク質の機能を理解する研究が強く進められている.特に,イオンチャネルはパッチクランプ法と呼ばれる,イオンチャネル内のイオンの通過を電気シグナルにて観察する手法により機能評価が行われている.しかし,この手法は難度が高く,熟練した研究者でも1日に数回程度のデータ取得が限度と言われ,イオンチャネルをターゲットとした薬剤開発の妨げとなっている.著者らが開発した液滴接触法は,単純な「8」の字のデバイス内において,簡単・迅速に再現良く人工平面脂質膜を形成できる技術である.このデバイスに電極を配線することにより,様々なイオンチャネルにおけるイオン透過の電気シグナル観察に成功している.本稿では著者らが開発したパッチクランプ法に代わる平面膜形成デバイスの有用性について示し,今後の展望を述べる.