著者
Shoulkamy Mahmoud 大嶌 麻妃子 光定 雄介 中野 敏彰 井出 博
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.190, 2011

内因性および環境中のDNA損傷因子は,DNAとタンパク質が不可逆的に結合したDNA-タンパク質クロスリンク(DPC)損傷を誘発する。DPCの生物影響を明らかにするためには,ゲノムにおけるDPCの生成量およびその動態を明らかにする必要がある。これまでに,アルカリ溶出法,ニトロセルロース膜結合法, SDS-K沈殿法,およびコメット法などがDPC定量法として用いられてきた。これらの方法はいずれも,タンパク質と共有結合したDNA量に基づきDPCを間接的に検出するものであり,試料DNAの鎖長が定量性に影響するほか,DNA量からDPC量(=クロスリンクタンパク量)への変換には様々な仮定が必要であるため,半定量的なDPC検出法である。したがって,より定量的なDPC検出法の開発が望まれる。本研究では,クロスリンクタンパク質の直接検出に基づく新規なDPC定量法を開発した。典型的なDPC誘発剤である種々のアルデヒド化合物でMRC5細胞を処理し,塩化セシウム密度勾配超遠心法でゲノムDNAを精製した。クロスリンクタンパク質をFITCで標識し,蛍光測定によりDPCを定量した。その結果,生理的に意味のあるアルデヒド処理濃度(10%細胞生存率)で十分なシグナルが得られることが分かった。この方法で調べたDPCの生成量,動態,安定性,修復の影響について報告する。さらに,FITC標識を用いたDPC検出法の高感度化,放射線照射により生じるDPCの検出も行っており,その結果についても報告する予定である。