- 著者
-
永井 正
大嶺 謙
- 出版者
- 自治医科大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
1.Imatinibに対する耐性機序の解析-CML由来細胞株KCL22にheminを添加すると、imatinibに対するIC_<50>値が増加した。Hemin存在下では、imatinib添加後でもリン酸化Bcl2、BclXL、cleaved caspase 3、7,9、PARP等の量的変化が抑制されたことから、hemeはimatinibによるアポトーシスの誘導を阻害するものと考えられた。Heminの添加により、(1)AREを有する_-glutamylcystein synthetase(γ-GCS)軽鎖のプロモーター活性が増加し、(2)γ-GCSが律速酵素であるglutahioneの合成量の増加を認めた。さらに(3)γ-GCS阻害薬Buthionine sulfoximineを添加すると、heminによるimatinib感受性低下が部分的に回復した。この結果は、hemeによるNrf2活性の変化がimatinib感受性調節機序の一端を担っていることを示唆している。2.ImatinibとFarnesyltransferase阻害薬であるTipifarnibとの併用により、imatinib耐性株および親株で相乗的に細胞増殖が抑制された。この場合、細胞株によってアポトーシスの誘導と細胞周期阻害のそれぞれの重要性が異なっていた。次にTipifaarnibに対する耐性獲得機序を明らかにする目的で、ヒトCML急性転化由来細胞株K562を親株としてTipifarnibに対する耐性細胞株K562/RRを新たにクローン化した。K562/RRにTipifarnibを添加すると、K562と同程度にHDJ-2蛋白のfarnesylationが阻害された。従って、K562/RRにおけるTipifarnib耐性は、標的分子であるfarnesyltransferaseに非依存性の機序によるものと推察された。K562では、Tipifarnib添加によりアポトーシス関連分子の発現量が変化しAnnexin V陽性細胞数の増加を認めたが、同量のTipifarnibをK562/RRに添加してもこれらの変化を認めなかった。次に、DNAマイクロアレイ法によりK562とK562/RRにおける遺伝子発現プロフィールの差異について検討した。その結果、K562/RRでは細胞周期関連分子の他にβ-globinの発現増強が認められた。さらに、それぞれの細胞株におけるTipifarnib添加前後での遺伝子発現の変化をDNAマイクロアレイ法で検討したところ、β-globinの発現量がK562ではTipifarnib添加により増加するのに対し、K562/RRでは低下することが明らかとなった。この結果は、分化形質の発現と耐性獲得との関連を示唆している。