著者
川俣 昌大 小原 均 大川 克哉 村田 義宏 高橋 英吉 松井 弘之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.68-73, 2002-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

養液栽培によるイチジクの周年生産のための基礎的資料を得ることを目的に二期作栽培を試みた.養液栽培イチジクの4年生樹を早期加温して得られた一番枝を用いた一作目と, 夏季の摘心後または切り戻しせん定後に再発芽した二番枝を用いた二作目における収量および果実の品質を調査した.なお, 培養液は園試処方の1/2単位(EC値1.5dS・m-1に相当)とし, 約2週間に1度全量交換した.1. 1月10日に切り戻しせん定を行い, 加温(最低温度15℃)を開始すると, 一番枝は1月29日に萌芽し, 果実は6月7日から9月30日まで収穫できた.また, 一番枝当たりの総収量は約1.5kg(15.0個), 平均果実重は104gとなり, 平均糖度は14%であった.2. 6月14日に一番枝を約200cm(約30節)の部位で摘心後, 最上位節から発生した二番枝は6月30日に萌芽し, 果実は11月24日から2月14日まで収穫できた.また, 二番枝当たりの総収量は約1.3kg(15.8個), 平均果実重は80g, 平均糖度は16%であったが, 12∿22節位の着果率が低かった.3. 7月26日に一番枝すべてを切り戻しせん定すると, 二番枝は8月5日に萌芽し, 果実は12月6日から2月14日まで収穫できた.また, 二番枝当たりの総収量は約1.0kg(12.5個), 平均果実重は72g, 平均糖度は16%であった.以上の結果より, 養液栽培によるイチジク4年生樹の二期作では, これまで明らかにされている土耕による早期加温栽培と比較して, 一作目の早期収穫が可能となり, 高品質・高収量の果実が得られた.また, 二期作目の果実はやや小さくなるものの糖度が一作目より高くなることから, 養液栽培によるイチジク果実の周年供給が十分可能と考えられた.
著者
大川 克哉 小原 均 栗田 由紀 福田 達也 Khan Zaheer Ulla 松井 弘之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.129-134, 2006-03-15
被引用文献数
1

ジャスモン酸誘導体であるn-propyl dihydrojasmonate (PDJ)のニホンナシ'豊水'に対する摘果効果とその作用機構について調査した.1996年には,満開17日前,12日前,満開日および満開7日後の4時期に500,1000および2000ppm PDJを,1998年には満開18日および14日前の2時期に500および750ppm PDJを花そうに散布処理した.PDJ処理は落果を誘起し,摘果効果を示した.その摘果効果は処理時期が早いほど,また処理濃度が高いほど高く,500〜750ppmの濃度で満開17〜18日前に処理すると適度な摘果効果が得られた.これらのPDJを処理した果そうでは,果そうあたりの着果数が0〜2果の果そうの割合が約64%となり,無処理果そうの16%と比べて著しく高くなった.さらに,落下した果実の花序軸上の位置についてみると,PDJを処理した果そうでは,基部から1〜3番目の果実が落下しやすい傾向があり,特に1および2番目の果実では約90%の果そうで落下が認められた.果重,果肉硬度,糖度および酸含量には処理間で大きな差は認められなかった.花柱内での花粉管伸長はPDJ処理花と無処理花とで差は認められなかったものの,満開時における胚珠の発育状態について観察したところ,PDJ処理花では胚のうが萎縮した異常な胚珠が多く認められた.これらのことから,PDJはニホンナシ'豊水'に対して開花前に処理すると高い摘果効果を示すことが明らかとなり,摘果剤として実際栽培で利用できる可能性が示唆された.また,PDJが落果を誘起する原因は,胚珠の正常な発育を阻害することによる受精阻害に起因するものと考えられた.