著者
大川 新之介 後藤 竜司
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は、主に非可換del Pezzo曲面および3次元AS正則2次代数の中心拡大から得られる3次元非可換射影空間(幾何学的には、非可換射影平面を超平面として含むという事。)について研究を行った。どちらも非可換代数幾何学の主要な研究対象である。非可換射影平面と非可換2次曲面にはAS正則Z代数を用いた厳密な定義がある。それ以外の非可換del Pezzo曲面については非可換射影平面の爆発による構成法が知られている一方で、十分に満足の行く定義は知られていなかった。今年度の研究では、Zよりも一般の添字集合を考えることで一般の非可換del Pezzo曲面をAS正則I代数を用いて定義できることを発見した。これはかなり重要な視点であると認識しており、今後研究を継続して、幾何学的データによる分類理論まで完成させる事を目指す。一方、上述の3次元非可換射影空間の中には3重平面をメンバーに含むような3次曲面のペンシルが含まれることがわかっている。このペンシルの構造の解析も行った。特に、3重平面で分岐する3重被覆を取ることによってペンシルの一般メンバーに丁度27本の直線が入ることの証明ができる、ということがわかった(証明の詳細は検討中)。非可換射影平面を楕円曲線で3重分岐させてできる非可換3次曲面の中の直線は容易にカウントできる、というところがポイントである。また、非可換射影空間内の直線のモジュライの主成分はペンシルの固定点集合としてあらわれる楕円曲線の2重被覆になるのであるが、これについても理解が進んできた。このペンシルのモノドロミーの計算は可換射影空間上でポアソンコホモロジーを計算する上でも重要であり、従って、そのポアソン構造で可換射影空間を変形して得られる一般化された3次元射影空間の倉西空間を理解する上でも役に立つと期待している。