著者
大平 征宏 齋木 厚人 大城 崇司 鈴木 和枝 龍野 一郎 白井 厚治 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.272-277, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は減量手術後に体重増加を来した51歳女性。若年時より肥満があり,30歳の時に糖尿病を発症した。45歳時には糖尿病性ケトアシドーシスで入院した。48歳時に過食症の診断も受けており,食事・運動療法では減量困難であった。減量手術を受け,体重は減量手術後6ヵ月で11kg 減少した。しかし,術後7ヵ月頃からリバウンドした。この頃,精神状態も不安定であり,日中は常に何かを食べている状態であった。不安定な精神状態の治療を目的に,抑肝散エキス5g/日を投与した。抑肝散投与後,摂取エネルギーの減少に伴って体重は減少した。患者本人も精神状態の改善を自覚した。また,HbA1c(JDS)も抑肝散投与後に8.7%から7.1%に改善した。本症例では抑肝散が患者の精神的不安定を改善することによって過食を抑える事で,体重減少およびHbA1c の改善が得られた可能性が示唆された。
著者
大平 征宏 齋木 厚人 山口 崇 今村 榛樹 佐藤 悠太 番 典子 川名 秀俊 南雲 彩子 龍野 一郎 小菅 孝明 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.191-196, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

以前我々は減量手術後に易怒性から過食,リバウンドした症例を抑肝散が改善させたことを報告し,肥満症患者の精神面に対する漢方治療が有用である可能性を提唱した。今回,頻用されている減量治療薬および抑肝散の減量治療に対する効果を比較した。当院で減量治療目的にマジンドール,防風通聖散または易怒性を指標に抑肝散を投与された肥満症患者107例を後ろ向きに検討した。投与3ヵ月後,マジンドールおよび抑肝散で有意な体重減少を認めた。糖代謝への影響を糖尿病患者のみで検討した。HbA1c の改善はいずれの群においても有意差は認めなかった。肥満症の減量治療にはメンタルヘルスの問題が重要であり,患者の精神面を意識した漢方治療は有効であることが示唆された。