著者
山田 武 大平 知佐 大山 ハルミ
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.89-97, 1997-06-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
23

腫瘍の生物学の研究の進展があれば, その診断法や治療法の改良・進歩が期待される.アポトーシス研究の進展に伴い, 放射線治療の基礎として放射線誘発アポトーシスに対する関心が高まるのは当然である.本稿では, まず, 放射線細胞死研究と, アポトーシス発見とその基本概念の確立との関係, さらに, p53, bcl-2などアポトーシス関連遺伝子の機能と放射線感受性との関係など, 最新の知見を紹介する.最近, DNA損傷に加えて, 放射線細胞死の標的としての膜損傷が, 放射線誘発アポトーシスの分子機構ならびに細胞内情報伝達の研究の進歩に伴い, クローズアップされてきた.さらに, アポトーシス実行過程の引き金となるタンパク質分解の役割と関連遺伝子, 放射線障害・リスクの軽減におけるアポトーシスの役割も注目されている.最後に, 放射線誘発アポトーシス研究において発見された増殖死型アポトーシスの意義について言及する.