著者
有賀 久哲 山田 章吾 高井 良尋 根本 建二 小川 芳弘 角藤 芳久 メヒア マルコ 西平 哲郎
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.347-355, 1996

目的: 食道癌に対する術後照射の有用性を検討する目的で, 術後照射例の治療成績を非照射例と比較してretrospectiveに解析した.対象と方法: 1981年から1990年までに当施設にて治療した根治切除食道癌278例を対象とした.術後照射併用183例 (RT (+) 群), 非併用95例 (RT (-) 群) であり, IV期症例, 術死症例は予め解析から除外した・術後照射は, 両鎖骨上窩と全縦隔を含めたT字形照射野を原則とし, 総線量30-60Gy (平均41.9Gy) であった.90例にpeplomycinまたはcisplatin, vindesine (CDDP併用療法) を用いた同時化学療法が併用された.RT (-) 群に対しても, 42例に強力化学療法が併用された.鎧塁: 各治療群の5年, 10年生存率は, RT (+) 群が47.2%, 30.4%, RT (-) 群が43.0%, 23.7%であったが, 統計学的肴意差はなかった.化学療法併用例に限ると5年生存率はRT (+) 群47.7%, RT (-) 群23.7%(P=0.684) であった.有意予後因子は, N因子 (p<0.0001), T因子 (p=0.0013), 年齢 (p=0.0091), CDDP併用療法 (p=0.0123) であった.再発様式では, T字形照射域の再発率がRT (+) 群18.6%, RT (-) 群37.6%であり, 前者が有意に低かった (p=0.0068).結語: 根治切除食道癌に対する術後照射は, 照射野内再発を有意に減少するが, 生存率の改善は得られなかった.化学療法の同時併用により, 生存率を改善する可能性が示唆された.
著者
木谷 哲 吉村 真奈 新保 宗史 山田 崇裕 本田 憲業
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.155-158, 2009-12-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
6

今回われわれは,疼痛緩和目的に,塩化ストロンチウム-89(Sr-89)を投与した後に大腿骨頸部病的骨折を受傷し,投与81日後に大腿骨頭置換術を施行した乳癌多発骨転移の症例を経験したので,報告する.手術施行にあたっては,事前に放射線量を推定し,Sr-89を含む骨からの被ばくを減らすため,十分な注意を払った.術前に推定した線量ならびに,線量計を用いて計測した線量は,ともに線量限度に比べ,低値であった.今回のわれわれの報告は,今後の同様の症例に対し,参考になる報告であると考えられる.
著者
山本 道法 羽田 良洋 赤木 泰
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.125-130, 2000

1979年から1998年までの20年間に当院にて翼状片切除後ストロンチウム90プラークによる術後照射が施行された36人40病変を対象とした. 全例鼻側眼球結膜から発生しており, 21病変は右側, 19病変は左側に認められた. 男性18人, 女性18人年齢は43歳から80歳 (中央値64歳) で, 新鮮例38例, 再発例2例であった. 翼状片切除から術後照射までの間隔は24時間以内が17例, 2日が1例, 4日が3例, 9日が5例, 10日が5例, 11日が4例, 12日, 13日, 21日, 25日, 39日がそれぞれ1例づつであった. 投与総線量はストロンチウム90プラーク表面にて40Gyで, 1985年までは週に1度, 1回線量8Gyで, 治療期間は29日であった. それ以降は, 週に1度, 1回線量10Gyで, 治療期間は22日であった. それぞれ20例づつ施行されていた. 観察期間は再発のため打ち切った症例を除くと, 12ヶ月から180ヶ月 (中央値43ヶ月) であった. 40例のうち5例が再発した. 再発例の5例中4例は5ヶ月以内に再発した. 残りの1例は30ヶ月後に再発がみられた. 全症例の2年局所制御率は90%であった. 年齢, 性別, 新鮮例再発例, 切除から照射までの期間, 総治療期間別の局所制御率を検討したが, 症例数が少ないためいつれも統計学的有意差は認められず, 治療成績に影響を及ぼす予後因子は決定できなかった. 術後照射に伴う重篤な晩期合併症は認められなかった. 翼状片切除後のストロンチウム90プラークによる術後照射は, 再発予防に有用でありかつ安全な治療と考えられた.
著者
荒木 不次男
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.53-63, 2005 (Released:2008-02-08)
参考文献数
17
被引用文献数
2

本研究では, 実際的な光子ビームの詳細な特性, すなわち線量分布, エネルギースペクトル, 角度分布, フルエンス分布, 平均エネルギー分布の分析について報告する. この分析は, エネルギーと照射野サイズの違いによる光子, 一次光子, 混入電子と陽電子の総合的な情報を含んでいる. Varian Clinac 2100C加速器の4MVと10MV-X線のシミュレーションにはEGSnrc/BEAMnrcモンテカルロコードを用いた. 光子ビームのシミュレーションにおいて, 粒子が存在する場所あるいは粒子が相互作用を生じる場所を含む各粒子のすべてのヒストリーに関する情報はPhase space filesに保存される. 各粒子の線量分布 (深部量曲線と線量プロファイル) の計算には保存されたPhase space filesを用いた. ファントム表面における各粒子成分のエネルギースペクトル, 角度分布, フルエンス分布, 平均エネルギー分布の分析にもPhase space filesを入力データとして繰り返し使用した. シミュレーションした光子ビームの精度は実測の線量分布との比較から検証した. モンテカルロシミュレーションと実測の深部線量曲線は, 10MVの照射野40×40cm2のビルドアップ領域を除いてすべてのビームで良い一致であった. 実測の深部量曲線の算出においては, 測定した電離量曲線を水/空気制限衝突質量阻止能比を用いて変換した. 4MVでの混入荷電粒子による表面線量は, 照射野10×10cm2と40×40cm2でそれぞれ最大線量の6%と26%であった. 同様に, 10MVではそれぞれ7%と23%であった. しかしながら, ファントム表面における混入荷電粒子のフルエンスは, すべての場合において入射光子フルエンスの1%未満に過ぎなかった.
著者
山田 武 大平 知佐 大山 ハルミ
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.89-97, 1997-06-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
23

腫瘍の生物学の研究の進展があれば, その診断法や治療法の改良・進歩が期待される.アポトーシス研究の進展に伴い, 放射線治療の基礎として放射線誘発アポトーシスに対する関心が高まるのは当然である.本稿では, まず, 放射線細胞死研究と, アポトーシス発見とその基本概念の確立との関係, さらに, p53, bcl-2などアポトーシス関連遺伝子の機能と放射線感受性との関係など, 最新の知見を紹介する.最近, DNA損傷に加えて, 放射線細胞死の標的としての膜損傷が, 放射線誘発アポトーシスの分子機構ならびに細胞内情報伝達の研究の進歩に伴い, クローズアップされてきた.さらに, アポトーシス実行過程の引き金となるタンパク質分解の役割と関連遺伝子, 放射線障害・リスクの軽減におけるアポトーシスの役割も注目されている.最後に, 放射線誘発アポトーシス研究において発見された増殖死型アポトーシスの意義について言及する.
著者
広田 佐栄子 清水 雅史 久保田 智之 内田 伸恵 平塚 純一 高田 康弘 宮脇 大輔 辻野 佳世子 金岡 徳芳 泉山 一隆 祖父江 慶太郎
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.109-116, 2007-06-25 (Released:2007-08-31)
参考文献数
19

【目的】乳癌の胸壁または残存乳腺に対する放射線治療後の肺有害事象とアレルギー素因との関連性を探る. 【対象と方法】当院および協力医療機関 8 施設において, 1980年12月から2005年10月までの間の任意の期間において連続して乳癌の胸壁または残存乳腺に対する放射線治療を施行した1,173症例1,177乳房を解析対象とした. アレルギー素因としては, 喘息, アレルギー性鼻炎, アトピー性皮膚炎, 接触性皮膚炎, 食物または薬剤過敏の履歴があることを定義とした(全症例のうち111例が有素因例). この111例のうち, 6 カ月以上経過観察できたか, それまでに肺有害事象を惹起した症例は85例であり, これをA群(アレルギー素因例)とした. また, 当院の症例でアレルギー素因の有無にかかわらず, 6 カ月以上経過が観察できたか, それまでに肺有害事象を惹起した症例は113例であったが, これをB群(アレルギー素因を問わない群)とし, B群のうち, アレルギー素因のないもの92例をC群(非アレルギー素因群)とした. 【結果】NCI-CTCAE(v.3.0)のGrade 3 以上の肺有害事象を呈したのはA群8.2%(7 例), B群2.7%(3 例), C群1.1%(1 例)であり, A群とC群の間に有意差を認めた(p = 0.0293). A群の 7 例のうちclassical pneumonitis(炎症が照射野内にほぼ一致するもの)が 3 例で, sporadic pneumonitis(炎症が照射野外にも広がるもの)は 4 例であった. 当院において, 組織学的に確認されたsporadic pneumonitisであるところの特発性器質化肺炎(COP)の 1 例と慢性好酸球性肺炎(CEP)の 1 例を経験したが, どちらもアレルギー素因を有していた. これらの詳細な臨床経過は本文内に記載した. 【結語】アレルギー素因を有することは, 乳癌の胸壁または残存乳腺に対する放射線治療後の肺有害事象の危険因子のひとつである可能性が示唆された.
著者
西村 哲夫 山下 孝 広川 裕 井上 武宏 築山 巌 渋谷 均
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.35-38, 2006

【目的】JASTRO小線源治療部会では,わが国では初めての小線源治療の事故に関するアンケート調査を行ったのでその結果を報告する.<br>【対象・方法】密封小線源を保有する国内の254施設に対して,2002年 9 月から2004年 8 月までの 2 年間に発生または判明した事例の報告を依頼した.<br>【結果】回答は224施設からあり,事故の事例は13 施設より14 件の報告があった.内容は1)分割照射の1 回線量が処方線量の50%を超える過剰照射または50%未満の過少照射:6 例,2)アプリケータ装着後の装置のトラブルにより治療開始ができない事例:3 件,3)線源移送のトラブル:2 件(いずれもコバルトラルス),4)その他 3 例(作業者の被曝,一時装着低線量率線源の体内残留,操作エラー)であった.<br>【結論】今回わが国で初めて小線源治療に関する事故の調査を行い14件の報告があった.その原因は治療計画や操作のエラーによるものが多く,事故の発生予防の上で示唆に富むものであった.今後同様の調査が継続して行われることが望まれる.
著者
桜井 英幸 高橋 満弘 鈴木 義行 清原 浩樹 斉藤 淳一 石川 仁 原島 浩一 北本 佳住 秋元 哲夫 中山 優子 長谷川 正俊 中野 隆史
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.187-191, 2003-09-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】子宮頸癌放射線治療後の性生活の変化について, 調査を行ったので報告する.【対象と方法】子宮頸癌の告知後に放射線治療を受け, かつ治療当時パートナーを有していた33例を対象とした. 治療時の年齢鮮平均50.5歳 (26.1~80.5), 調査時の年齢は平均54.3歳 (31.3~80.9) であった.子宮頸癌の病期は, I期8例, II期14例, III期9綱, IV期2例であった. 放射線単独例は20例, 術後照射例13例であった。【結果】治療前の性交の頻度は, 治療前から全くなしと答えた5例を除いた場合, 性交頻度が減少したのは21例, 頻度が変わらないのは5例, 増加したのは2例であった.治療法別では, 放財線単独群で減少例が多い傾向がみられた. 子宮癌になったことで精神的に性交がいやになったと回答したのは21例 (65.6%) であった.パートナーが性交を嫌がっている, または遠慮していると回答したのは9例 (31.0%) で, パートナーのために我慢して性交に応じていると回答した症例は, 9例 (32.1%) であった.また, 17例 (63.0%) が, 治療後に挿入困難となったと回答していた. 性交による出血が心配であると回答した症例も, 24例.(75.0%) と高頻度に認められた. 性交痛に関しては, 17例 (63.0%) が疼痛ありと回答していたが, 我慢できない痛みであると答えたのは3例のみであった. 性交によって治療前よりも快感が得られなくなつたと回答したのは13例 (52.0%) であった.【結語】子宮頸癌放射線治療後には性交頻度が減少する例が多く, その理由は, 挿入困難, 出血, 性交痛などの器質的障害だけでなく, 子宮頸癌を経験したことによる性交への意欲の喪失であった.
著者
馬場 祐之 西村 龍一 水上 直久 村上 龍次 森下 昭治 冨高 悦司 野津手 志保 村田 友佳 山下 康行
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.171-175, 2003

【目的】肺野の小結節の線量分布計算における散乱補正の有用性をファントムモデルにより検証する.<BR>【方法】肺野の結節を摸したファントムモデル (1×1×0.7cmおよび3×35×5cm) を作成し, 胸部ファントムに装着して撮影したCTデータをもとに線量分布計算装置にて4MVX線および10MvX線での線量分布をsuperposidon法 (散乱線に対する密度補正あり) および不均質補正ありのClarkson法で算出した. 同じファントムモデルでMarcuschamberおよびフィルム法で実際に線量を測定し, superposition法およびClarkson法で算出された照射野中心での推定線量と実測値の差異とX線のエネルギーおよび結節の大きさ毎に検討した. また, 線量分布図および結節平均線量についても大小の結節についてsuperposidon法およびClarkson法で各々算出し, 両者の比較を行って線量分布および結節平均線量の線量計算方法による差異を検討した.<BR>【結果】照射野中心推定線量と線量計よる実測線量との比較ではsuperposition法での計算結果と実測線量の差は5%以下と僅かであったのに対して, Clarkson法では実測線曇に対して小結節において7%(4MVX線) および32%(10MVX線), 大結節でも6%<BR>結簸の平均線量の比較ではCI訂kson法はsupeosition法での推定線量に比較して小結節では29%(4MVX線) および48%(10MVX線), 大結節でも12%(4MVX線) および13%(10MVX線) の過大線量評価 (いずれもp<0.001) を認めた.(4MVX線) および7%(10MVX線) の過大線量評価を認めた.<BR>【結語】肺野の小結節におけるsuperposition法による計算結果が信頼性の高いものであることが確認された. 特に10MVX線で1cm程度の肺野小結節に照射する場合には従来一般的に用いられている散乱線に対する密度補正を行わないclarkson法では実測値に対して32%の線量過大評価をしており, 注意が必要と思われた.
著者
中村 和正 鹿間 直人 栂尾 理 佐々木 茂 篠田 充功 國武 直信 木村 正彦 渡辺 哲雄 佐々木 智成 寺嶋 廣美 増田 康治
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.79-82, 2001-06-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1

放射線治療後の味覚障害に対し亜鉛含有胃潰瘍治療薬ポラプレジンクを投与し, そあ効果を検討した. 舌を含む照射野にて放射線治療を施行した悪性腫瘍症例22例を対象とした. 舌の一部または全てに対する照射線量は25, 5Gyから46.0Gy (平均37.9Gy) であった. 放射線治療終了後0-1,561日 (平均305.3日) に, ポラプレジンクー回75mg, 一日2回の投与を行い, 投与期間ば25日から353日 (平均96.9日) であった. 20例 (90, 9%) に自覚的味覚障害の改善を認めだ放射線治療後の味覚障害の回復に亜錐製剤は有効と考えられた.
著者
小泉 雅彦 西山 謹司 山崎 秀哉 長谷川 義尚
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
日本放射線腫瘍学会誌 (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.157-163, 2004

頭頸部腫瘍にstereotactic radiotberapy (SRT), conformal radiotherapy (CRT) を用いた症例に対し, 唾液腺シンチを使って定量的評価をし, 唾液腺障害の軽減の効果について検討した. 対象は大阪府立成人病センターにて1999年9月-2002年9月にSRT, CRTを行った上咽頭癌7例, 中咽頭 (扁桃) 癌3例である. 年齢は17-71歳 (中間値48歳), 男性7人, 女性3人で, 左右全耳下腺へ約40Gyの通常外照射後, 30-36Gyのブースト照射を健側耳下腺を可及的に照射野から除外したSRTまたはCRTで行った. 放射線治療後8ヶ月以降に耳下腺シンチグラフィーを行い, 摂取率, 分泌率を測定した. 放射線治療前の頭頸部腫瘍患者18例をコントロールとして測定して, 平均摂取率, 分泌率は, それぞれ0.40%, 40%であった. 対象8例の耳下腺50%体積線量 (D50) は健側44.3±3.8 (39.2-49.1, 中央値44.6) Gy, 患側58.8±8.6 (47.3-70.5, 中央値60.8) Gyとなった. 放射線治療後の平均摂取率は健側0.44%, 患側0.47%と, 両側とも変化しなかった. 平均分泌率は健側11.0%, 患測39%であり, 両側とも低下したが, 患側が健側より有意に低くなった (p=0,023). D50と摂取率には相関はなかったが, 分泌率は負の相関を示した.D50が40Gyを超えても55Gy未満に留まった14耳下腺では分泌率は平均10%程度あり, 55Gy以上の6耳下腺で平均2%と著しい低下を示したのに対し分泌率をより保持していた. 頭頸部腫瘍に対しブースト照射としてSRT・CRTを用い耳下腺への照射線室を低減させ, 健側の唾液線分泌障害を若干軽減できた.
著者
渡邉 祐子 末藤 大明 小島 和行 辻 千代子 服部 睦行 江藤 英博 鈴木 弦 淡河 恵津世 早渕 尚文
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.83-86, 2009-06-25 (Released:2009-09-12)
参考文献数
7

前立腺癌に対するI-125密封小線源治療を施行後,右室内に線源が迷入した症例を経験した.本症例は胸部写真,単純CTで冠動脈への迷入が否定できず,64列MDCTを用いた冠動脈CTを撮影することにより,部位診断に至った.今後,密封小線源療法を受ける患者が飛躍的に増加すると思われ,さまざまな部位への線源迷入が予想される.線源迷入の位置確認に際して,単純写真で左下肺野レベルに迷入線源を認め,単純CTで冠動脈への迷入が疑われるようであれば,心電図同期下で64列以上のMDCTを用い,冠動脈を評価することが重要と考えられる.
著者
原 竜介 伊東 久夫 安田 茂雄 町田 南海男 磯部 公一 宇野 隆 高野 英行 幡野 和男 茂松 直之 久保 敦司
出版者
Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.109-115, 1999-06-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
13

放射線治療を行った原発不明頸部リンパ節転移癌患者29例について検討した. N病期はNl: 1例, N2: 14例, N3: 14例で, 組織型は扁平上皮癌25例, 未分化癌4例であった. 11例は放射線と手術が併用され (RT+Ope群), 18例は放射線を主体に治療した (RT群). 頸部リンパ節への総線量は50-78Gyであった. 全体の5年生存率は40%となった. N病期別の5年生存率はN1-2b群61%, N2c-N3群22%となり, N1.2b群が有意に予後良好であった (p=0.003). 治療法ではRT群33%, Ope+RT群59%となり, Ope+RT群において有意に予後良好であった (p=0.004). N1-2b群とN2c-3群の累積局所制御率は, それぞれ73%, 34%となった (p=0.026) 治療法別の局所制御率では, Ope+RT群の76%に対し, RT群は36%となった (p=0.010). 経過中に原発巣が発現した症例は4例であった. 原発不明癌の頸部リンパ節転移では, 転移リンパ節の制御が生存率改善に必要で, 出来る限り転移リンパ節を切除する必要性が示唆された.
著者
中村 光宏 成田 雄一郎 宮部 結城 松尾 幸憲 溝脇 尚志 則久 佳毅 高山 賢二 永田 靖 平岡 眞寛
出版者
一般社団法人 日本放射線腫瘍学会
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.263-271, 2007-12-25 (Released:2008-03-28)
参考文献数
27

【目的】本研究の目的は,四次元イメージング手法の 1 つで,放射線治療分野におけるターゲット動体評価で期待されている 4D-CTの物理学的評価を行うことである.【方法】4D-CTは外部から取得した撮影対象の呼吸信号と各寝台位置で連続的に取得したCT画像を関連付けることで構成される.呼吸信号はRPMシステム(Varian Medical Systems, Inc., Palo Alto, CA, USA)で取得し,模擬腫瘍ファントムを周期的に運動させるために三次元動体ファントムシステムを使用した.4D-CT画像解析を行うためのファントム実験を行い,画像上の体積,重心,形状及び平均CT値を測定した.CT画像上で模擬腫瘍ファントムを自動的に抽出するために,CT値で閾値を設定した.【結果】三次元動体ファントムシステムの周期やCT閾値をさまざまに変化させて解析を行った結果,画像上で測定される模擬腫瘍ファントムの体積や平均CT値はこれらのパラメータに大きく依存したが,重心変位や球形度への影響は非常に小さかった.4D-CT画像には,位相ずれが含まれていたが,そのずれは3D-CT画像よりも大きく軽減されていた.【結論】 4D-CT画像解析を行うためのファントム実験を行った.4D-CTを用いることで,放射線治療計画時における臓器の輪郭入力がより正確にできるだけでなく,これらの移動範囲も定量的に評価できるようになるため,その臨床的意義は大きい.
著者
辻井 博彦
出版者
The Japanese Society of Oral Pathology & The Asian Society of Oral and Maxillofacial Pathology
雑誌
The Journal of JASTRO (ISSN:10409564)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.63-76, 1994-06-25 (Released:2011-07-11)
参考文献数
34
被引用文献数
1

陽子線の最大の魅力は, ブラッグピーク効果により優れた線量分布を形成することであるが, 同時にその照射装置は既存の加速器に手を加えれば容易に利用出来るという利点も有している. 生物学的には光子線と同じ低LET放射線に分類されるが, これは, 従来から蓄積されている光子線の生物学的知識をそのまま利用できることを意味する.陽子線治療はこれまで世界の16施設で行われ, 約1万3千人が治療された.適応疾患はまだ限られており, 70%以上が眼や頭蓋内小病巣で占められている.このうち30~40%は網膜メラノーマ, 約40%は頭蓋内の小病巣で, 他は頭頚部や前立腺などで, 胸腹部の深部癌はまだ少数である. 網膜メラノーマは, 陽子線により大線量照射 (70Gy/5回または60Gy/4回) が可能になってから, 眼球内制御率96%, 生存率80~88%という素晴らしい成績が得られるようになった. 頭蓋底・頚椎原発肉腫に対しては, 陽子線で65-75Gy (1.8Gy/fx) 照射することにより65~91%の5年制御率が報告されている.一方, 筑波大学では主に深部臓器癌を対象として, 肺, 食道, 肝, 膀胱などで良い成績を得ている.なかでも原発性肝癌に対しては, 陽子線治療が将来有効な治療法になるものと期待される.以上の優れた臨床成績に刺激され, 新たに陽子線治療を行いたいという施設が急速に増えている.これは陽子線治療がコスト・ベネフィットの面からも十分に評価できる治療法であることを証明するものである.