著者
金山 剛 大平 雄一 新井 由起子 小園 広子 千代 憲司 植松 光俊
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.F3P3581-F3P3581, 2009

【目的】高気圧・高濃度酸素セラピー(以下、酸素セラピー)は、溶解型酸素を効率よく体内へ吸収し、毛細血管まで酸素供給が可能なことから、疲労回復など様々な効果があることが知られている.実際にアスリートからモデルなど数多くの人に実施されており、その効果がメディアなどで報道されている.しかし、これらを定量的な指標を用いて検討した報告は少ないのが現状である.本研究では、酸素セラピーによる血圧、脈拍、視力の変化について検討することを目的とした.<BR>【方法】対象は当センターにて酸素セラピーを実施した88名(男性45名、女性43名)、平均年齢42.3±13.5歳とした.平均実施期間は11.3±35.3日、1ヶ月の平均利用頻度は1.2±2.8回であった.事前に十分に説明を行い、同意を得た上で実験を開始した.<BR> 酸素セラピーには、高気圧・高濃度酸素カプセル(Take Heart社製CocoonO2)を用いた.1回の実施時間は60分とし、実施肢位は背臥位とした.開始より10分かけてカプセル内の気圧を1.2気圧まで上昇させ、終了5分前から5分かけてカプセル内の気圧を通常気圧まで減圧した.評価項目は収縮期血圧、拡張期血圧、脈拍、視力とした.測定手順は、酸素セラピー開始前は血圧及び脈拍数、体組成(体重、体脂肪率、基礎代謝量)、視力の順に計測し、酸素セラピー終了後は視力、体組成、血圧及び脈拍数の順に計測した.測定においては特に休息時間などは設けなかった.<BR> 統計処理は、1~5回目の酸素セラピー実施前後比較にpaired t-test、Wilcoxon signed rank testを用いた.また、1回目の酸素セラピー実施前と5回目の酸素セラピー実施後の比較も同様の処理をした.各指標における酸素セラピー実施前の値と酸素セラピー実施前後での変化量の関係についてピアソンの相関係数を用い、有意水準は全て5%とした.<BR>【結果】収縮期血圧は3回目のみ、酸素セラピー実施後に有意に低下した.拡張期血圧は全てにおいて有意な変化は認められなかった.脈拍は1,2,4,5回目において、酸素セラピー実施後に有意に低下した.視力は1回目の酸素セラピー実施後と、1回目と5回目の比較において有意な改善が認められた.酸素セラピー実施前の値と酸素セラピー実施前後での変化量の関係については、全ての指標において有意な負の相関関係を認めた.<BR>【考察】脈拍数は酸素セラピー実施後低下することが明らかとなり、酸素供給の増加やリラクゼーション効果によるものと推察される.視力においては1回目の実施で改善し、その効果が5回目まで維持されていた.この事は、眼は脳とならんで毛細血管に富んでおり、酸素セラピー実施での溶解型酸素の増加による効果であると考えられる.また、血圧及び脈拍は実施前の値が高い者程低下しやすく、視力は実施前の値が低い者程改善しやすい事がわかった.
著者
田中 美香 西田 宗幹 大平 雄一 植松 光俊
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1087-E1087, 2006

【はじめに】早朝や準夜帯における理学療法(以下、PT)の必要性が言われて久しいが、その客観的な効果を検証した報告は少ない。我々は自宅退院後の活動量の増加に伴い疲労感や痛みの訴えを認め、入院中の活動量不足、特に夕食後から消灯までの時間の活動量が低いことを報告した。この問題を改善するため当院でも遅出PTプログラムの実施(以下、遅出PT)を導入した。本研究ではこの遅出PTにより身体活動量がどのように変化するのかを検討した。<BR><BR>【対象および方法】対象は当院回復期リハビリテーション病棟入院女性患者7名(84.4±6.6歳)、Barthel index84.3±7.9点、整形外科疾患2名、脳血管障害3名、内科疾患2名であった。遅出PTの対象は、退院を約1ヶ月以内に控えた患者とし、その実施は週3回、17時~21時とした。夕食前後は移動および整容動作の確認を行い、夕食1時間後の19時頃からセラバンド等を用いた集団体操と、個別トレーニングを組み合わせて実施し20時30分までに終えて、就寝の準備を始めるようにした。<BR> 身体活動量の評価にはベルトにて臍部の高さ腹部中央に装着した携帯型動作加速度装置アクティブトレーサー(GMS社製AC-301)を用い、加速度設定は0.05、0.15、0.2Gの3CHとし、各CHでの総カウント数を身体活動量とした。計測は遅出PT実施前の不特定日と、実施後の遅出PT実施日、1日の17時~21時時間帯で行い、それぞれ1時間毎の時間帯別の比較をした。また、前回報告の退院後在宅活動量との比較も実施した。統計は遅出実施前後の身体活動量の比較にpaired t-test、在宅での身体活動量との比較にunpaired t-testを用い、有意水準1%とした。<BR><BR>【結果】17時~21時までの平均総カウント数の遅出PT実施前・後比較では、それぞれ0.05Gで12173±632→24234±2498、0.15Gで1696±225→4170±2499、0.2Gで473±207→1102±182とすべての加速度領域で遅出PT実施後有意に増加した(P<0.0001)。時間帯別の比較では、19時帯で0.05G、0.15Gで(P<0.001)、0.2G(P<0.0001)、20時帯では全ての加速度領域で実施後、有意に増加した(P<0.0001)。前回の退院時在宅身体活動量との比較では、全てにおいて有意差は認めなかった。<BR><BR>【考察】身体活動量は有意に増加しており、時間帯別比較からも夕食後から消灯時間までの身体活動量を向上させる上で有効であることがわかった。さらに、今回の遅出PTが在宅での身体活動量とほぼ同様の活動量が獲得できたことから、在宅生活に向けての準備として適切であると考えられる。また、遅出PT実施中の患者は笑顔が多く、その参加を楽しみにしている反応から生活の質への効果も推測できた。<BR><BR>