- 著者
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梶原 史恵
大川 裕行
江西 一成
植松 光俊
中駄 美佳
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.E0443, 2007 (Released:2007-05-09)
【はじめに】 慢性期のリハビリテーションでは,日常生活での身体活動量の確保が重要な課題となる。特に,施設入所高齢者では、生活範囲の狭小化や疾患の重症度から活動量が低下することが推察される。施設入所高齢者の身体活動量を24時間にわたり正確に評価できれば,実施しているリハビリテーション・プログラムの検証を行うことも可能となる。そこで今回、老人保健施設入所者を対象に、24時間の身体活動量と自律神経活動を測定し、歩行能力別・生活時間帯別に検討を加えたので報告する。【方法】 対象は、某介護老人保健施設入所中の者で、本研究の趣旨が理解でき協力可能な12名(年齢84±8歳、男性4名、女性8名)とした。被験者は,歩行可能群(6名),不可群(6名)に分けられた。 日常生活活動能力(Barthel Index)評価し,アクティブトレーサー(GMS社製AC-301)を用いて身体活動量、起床時間、および自律神経活動を24時間連続的に記録した。身体活動量,起床時間は,腰部に装着したアクティブトレーサーの3方向の加速度,及び傾きから算出した。また,自律神経活動は記録された心拍R-R間隔変動をスペクトル解析して求めた。得られた結果は,歩行可能群・不可群,日中時間帯・夜間時間帯で比較検討した。【結果】 24時間の身体活動量は、歩行可能群,不可群間で有意差を認めなかった。 時間帯による身体活動量の比較では,一部を除き両群ともに日中時間帯の身体活動量は夜間時間帯よりも有意に大きな値を示した.歩行可能群は不可群よりも日中時間帯の身体動量が大きかったが両群に有意な差は認めなかった。 歩行可能群の起床時間は,日中時間帯の方が夜間時間帯よりも有意に大きな値を示したが,不可群では時間帯による起床時間に差は認めなかった.さらに,両群の日中時間帯に有意な差はなかった。 自律神経活動の比較では,両群ともに24時間を通して交感神経・副交感神経活動に差は認められなかった。【考察】 歩行可能群と不可群の起床時間に差がないことは、歩行不可群でも介護スタッフ等により、座位起立姿勢を促されていたことが考えられた。また、歩行可能群で日中時間帯と夜間時間帯の起床時間に差を認めたことは、歩行可能群は日中時間帯に座位起立姿勢をとる機会が多いものの、活動量としては、歩行不可群と同程度のものであったことがわかった。さらに、自律神経活動の結果もこれを裏付けるものであった。また、歩行不可群の生活も昼夜の差が自律神経活動量に現れない程度のものであった。 今回得られた結果から、歩行不可群は、24時間の内、約8時間の起床時間を確保できていることがわかった。また、歩行可能群の高い運動機能を、日常生活の活動量に反映させる取り組みが必要であることを確認した。