著者
木下 良正 原田 篤邦 大成 宣弘 横田 晃
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.111-117, 2004-03-01 (Released:2017-04-11)

症例は71歳女性. 2ケ月前より左眼窩部痛と軽度の複視を主訴に来院した. 左眼の外転と外下方のわずかな眼球運動障害を認めるのみで眼球結膜充血や眼球突出, 眼圧の上昇もなかった. 血管撮影にて両側内頸動脈と外頸動脈から左上眼静脈へ多くのシャント血流が認められたが, 流出路がよく発達しているため塞栓術を施行しなかった. 退院3週間後, 左眼の完全眼球運動障害が出現し再入院となった. 神経学的には左眼痛の増悪および全方向性の複視, 左眼の全外眼筋麻痺を認めたが, 眼球結膜の充血はなく眼圧の上昇もなかった. 血管撮影にてシャント量はむしろ減少し流出路の顔面静脈の造影は不良となっていた. 下錐体静脈洞経由で海綿静脈洞の塞栓術を施行し症状の改善を得た. 軽微な複視と眼痛で発症し, 結膜充血を伴わず急速に症状が悪化した特発性頸動脈海綿静脈洞瘻症例を経験したので報告した.