著者
飯田 慎一郎 松本 吉矢 大搗 泰一郎 河原 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.179-182, 2016-05-25 (Released:2016-06-07)
参考文献数
14

背景.気管支蔓状血管腫は,気管支動脈が蔓状に走行し,しばしば肺動脈と異常吻合を来す稀な疾患である.発見動機のほとんどが喀血である.症例.症例は70歳女性,繰り返す喀血と呼吸困難を主訴に来院された.胸部単純CTで右B2気管支からの出血を疑い,造影CTでは,右気管支動脈の拡張,蛇行を認めた.気管支鏡検査では気管下部膜様部から右第2分岐部にかけて拍動のある隆起性病変を認め,異常気管支動脈(後に気管支蔓状血管腫と判明)に由来する所見と思われた.しかし,可視範囲に明らかな出血源がなく,気管支動脈造影を行って,右上葉気管支の蔓状血管腫と診断した.肺動脈との明らかな異常吻合は認めなかったが,気管支蔓状血管腫が喀血の原因と判断し,スポンゼルⓇを用いて気管支動脈塞栓術を行い,治癒を得た.施行後1年経過した時点で喀血の再発を見ていない.結語.気管支動脈塞栓術が有効であった気管支蔓状血管腫を経験した.肺動脈との異常吻合のないタイプであったため,長期にわたり再発なく経過することが期待できると考えるものの,慎重な観察の継続を予定している.