著者
岡 真由美 星原 徳子 河原 正明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.13-20, 2020 (Released:2021-02-06)
参考文献数
15

超高齢社会において、加齢性斜視であるsagging eye syndrome(以下SES)が注目されている。本研究では、SESの鑑別疾患としてあげられる眼球運動神経麻痺との相違を検討し、画像診断の前に視能訓練士が行うべき病態分析と視能評価について述べた。1.年齢区分別の斜視の種類 年齢区分が高くなるほど共同性斜視が減少し、非共同性斜視(眼球運動障害を伴う斜視とする)が増加した。非共同性斜視のうち、年齢区分が高くなるにつれて増加傾向にあったのは滑車神経麻痺、SES、Parkinson 病関連疾患であった。2.SESと眼球運動神経麻痺における複視の発症様式 SESは滑車神経麻痺および外転神経麻痺よりも発症から初診までの期間が長く、複視の発症日が不明確であった。3.SESと眼球運動神経麻痺の眼位・眼球運動 内斜視を伴うSES は外転神経麻痺よりも斜視角が小さく、わずかな上斜視および回旋偏位を伴っていた。上斜視を伴うSESは下転眼に外回旋がみられた。滑車神経麻痺では健眼固視のとき外回旋が上転眼にみられたが、麻痺眼固視のとき一定の傾向がなく、両者を回旋眼で評価することは困難であることがわった。 高齢者の斜視ではSESおよびその合併例が多い。SESと眼球運動神経麻痺との区別は困難であることから、病歴聴取と患者の観察、回旋偏位の検出が有用であり、むき運動検査と合わせて総合的に評価することが重要である。
著者
飯田 慎一郎 松本 吉矢 大搗 泰一郎 河原 正明
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.179-182, 2016-05-25 (Released:2016-06-07)
参考文献数
14

背景.気管支蔓状血管腫は,気管支動脈が蔓状に走行し,しばしば肺動脈と異常吻合を来す稀な疾患である.発見動機のほとんどが喀血である.症例.症例は70歳女性,繰り返す喀血と呼吸困難を主訴に来院された.胸部単純CTで右B2気管支からの出血を疑い,造影CTでは,右気管支動脈の拡張,蛇行を認めた.気管支鏡検査では気管下部膜様部から右第2分岐部にかけて拍動のある隆起性病変を認め,異常気管支動脈(後に気管支蔓状血管腫と判明)に由来する所見と思われた.しかし,可視範囲に明らかな出血源がなく,気管支動脈造影を行って,右上葉気管支の蔓状血管腫と診断した.肺動脈との明らかな異常吻合は認めなかったが,気管支蔓状血管腫が喀血の原因と判断し,スポンゼルⓇを用いて気管支動脈塞栓術を行い,治癒を得た.施行後1年経過した時点で喀血の再発を見ていない.結語.気管支動脈塞栓術が有効であった気管支蔓状血管腫を経験した.肺動脈との異常吻合のないタイプであったため,長期にわたり再発なく経過することが期待できると考えるものの,慎重な観察の継続を予定している.
著者
星原 徳子 岡 真由美 河原 正明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.229-235, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
24

【目的】麻痺性斜視における融像の異常な状態(融像状態)別の視能訓練成績を分析し、家庭訓練を中心とした視能訓練方法を検討した。【対象および方法】対象は、視能訓練を施行した麻痺性斜視58例で、年齢は30~87歳であった。融像状態は、潜伏融像、部分融像、狭い融像野に分類した。視能訓練は、衝動性眼球運動訓練、輻湊訓練、fusion lock training、プリズム療法を行った。治癒度は4段階とし、治癒度Ⅰは融像野が30°以上とした。【結果】融像状態は、潜伏融像27例、部分融像27例、狭い融像野14例であった。治癒度Ⅰの獲得が高率であったのは部分融像21例(78%)と狭い融像野11例(79%)であった。潜伏融像は治癒度Ⅰの獲得が低率であった。治癒度Ⅰを獲得できた狭い融像野では、プリズム療法が高率であった。全ての融像野で衝動性眼球運動訓練の実施率が高く、狭い融像野と部分融像においては衝動性眼球運動訓練とfusion lock trainingの組み合わせが多かった。【結論】家庭訓練は、融像野が存在する場合にはプリズム装用下で衝動性眼球運動訓練とfusion lock trainingを組み合わせ、潜伏融像では衝動性眼球運動訓練が有用であった。
著者
金永 圭祐 岡 真由美 星原 徳子 橋本 真代 森 壽子 河原 正明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.249-255, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1

【目的】注意欠陥多動性障害(以下、ADHD)児は眼球運動異常を伴うことが報告されている。今回我々はADHD児において文字間隔と行数が読みの眼球運動に与える影響について検討した。【対象および方法】対象はADHD児5例(平均年齢6.4 ± 0.5歳)(以下、ADHD群)とした。このうち間欠性外斜視が2例であった。対照は正位または斜位5例を対照群(6.4 ± 0.5歳)、間欠性外斜視5例(7.0 ± 0.6歳)を斜視群とした。読みの眼球運動発達検査はDevelopmental Eye Movement test(DEM)を用いた。DEMはテストA、テストBおよびテストC で構成されている。テストA、Bでは数字が縦(2行)に等間隔に、テストCでは横(16行)に不等間隔に配列されている。DEM測定中の眼球運動の記録にはEye Mark Recorder-9®を用いた。分析はテストCの1行あたりの読み時間、文字間の視角別(<2º、 2º≤ <4º、 4º≤ <6º、 6º≤ <10º、≥10º)の衝動性眼球運動(saccade)回数、saccade速度、停留時間とした。【結果】DEM比率の平均はADHD群が1.90±0.3、対照群が1.47±0.1、斜視群が1.40±0.2であった。ADHD群は対照群に比べ1行あたりの読み時間が3、4、5、6、7、13行目で延長した。saccade回数は文字間の視角が4º未満の場合、両群に差はなかった。しかし文字間の視角が4º以上ではADHD群のsaccade回数が有意に増加した。両群のsaccade速度および停留時間に差はなかった。【結論】ADHD児は文字間隔と行数が読みの眼球運動に影響していた。ADHD児には眼球運動の側面から視覚教材の文字配列を工夫し、学習障害の早期発見と予防を行う必要がある。
著者
星原 徳子 岡 真由美 通堂 小也香 橋本 真代 森 壽子 長島 瞳 河原 正明 藤本 政明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌
巻号頁・発行日
vol.46, pp.119-128, 2017

<p><b>【目的】</b>言語聴覚士(ST)が所属する医療機関より精査目的で受診した発達障害児の眼科的評価および治療法を分析し、視能訓練士(CO)の発達障害児に対する視能評価を通した医療連携と発達支援について検討した。</p><p><b>【対象・方法】</b>対象は、発達障害児17例(未就学児9例、就学児8例)で、初診時年齢は2歳8か月~12歳9か月(中央値6歳1か月)であった。発達障害にかかわる診断名は、自閉症スペクトラム障害、注意欠如多動性障害、学習障害、発達性協調運動障害、言語発達障害、構音障害、これら合併例であった。</p><p><b>【結果】</b>STからの紹介理由は、視覚的問題12例、視行動の問題6例、家族歴に伴う精査目的3例に大別された(重複例を含む)。視覚的問題の内訳は、眼位異常4例、頭位異常3例、片目つぶり2例、注視・追視困難1例、眼鏡装用不十分3例であった。これら12例中11例が弱視または斜視等による視能障害があると診断された。視行動の問題を有していた6例全例が、弱視または斜視と診断された。治療は、外斜視手術施行2例、健眼遮閉法1例、両下眼瞼内反症手術1例(重複例を含む)であった。また、全例に屈折異常があり、等価球面値±0.75D以上の症例14例(82%)において屈折矯正を行った。</p><p><b>【結論】</b>COとSTの医療連携により、COは早期に視能評価と視能矯正を実施することが可能であった。COは、視知覚認知課題の遂行に視覚入力系を整える役割があった。</p>
著者
三村 治 河原 正明 清澤 源弘 中馬 秀樹 不二門 尚 山本 紘子 若倉 雅登
出版者
日本眼科学会
雑誌
日本眼科學会雜誌 (ISSN:00290203)
巻号頁・発行日
vol.115, no.7, pp.617-628, 2011-07-10
参考文献数
65
被引用文献数
2
著者
星原 徳子 岡 真由美 山本 真代 金永 圭祐 森 壽子 長島 瞳 河原 正明 藤本 政明
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.59-65, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
29

【目的】発達障害の早期発見は、社会生活での自立の促進において重要である。視能訓練士(以下CO)は小児の視覚だけでなく他機能との関わりにも注目し、成長発達の支援に関わる必要がある。今回、COと他院耳鼻科言語聴覚士(以下ST)が連携し、発達障害の評価と支援が可能であった症例を報告する。【対象・方法】2004年6月~2012年6月にK眼科で弱視または斜視と診断された18歳未満の症例412例中、発達障害を疑いSTが所属する専門医療機関への受診を促した12例であった。症例は未就学児8例(2歳5か月~5歳8か月)、就学児4例(6歳6か月~14歳3か月)であった。発達評価には遠城寺式・乳幼児分析的発達検査表、同旧版(以下遠城寺式発達検査表)を使用した。【結果】生活年齢に相応した視機能検査ができなかったのは5例であった。発達障害を疑った視機能検査時の特徴は、発音不明瞭6例、多動4例、クレーン現象1例、コミュニケーション不良2例であった。12例全例の親が現状を否定する言動をし、ペアレントトレーニングを要した。STによる積極的訓練を開始できたのは7例、STによる6か月毎の経過観察を要しているものが2例だった。ST受診を拒否または一度受診したが訓練拒否したものが3例であった。【結論】遠城寺式発達検査表の項目を考慮して視機能検査を施行することは、小児の発達状態の評価に有用であった。COがSTと連携することで発達障害児の早期発見と就学前後での支援につながった。