著者
樋口 秀行 稲垣 友紀子 平手 博之 高須 宏江 大越 有一 大日方 洋文 太尾田 正彦
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.1-20, 2021-01-01

定例の手術もかなりはけて,少しまったりした雰囲気になっていた夕方の麻酔科控え室。そこに,緊急手術申し込みの連絡が入った。SARS-CoV-2肺炎による呼吸不全により人工呼吸管理を行っていたが,1日前に抜管した。本日,不穏状態になり,ベッド柵を乗り越え,落下し上腕骨を骨折した。開放創があるため緊急手術をしたいという内容であった。2日前のPCR検査ではいまだ陽性が持続しているとのことである。 日本麻酔科学会の指針では,区域麻酔で施行できる症例は極力,全身麻酔を避けるとあるが,最近,腕神経叢ブロックのみで外科手術を施行した経験もないし,斜角筋間アプローチによる横隔神経麻痺は困る。当院には陰圧手術室が存在しないし,個人防護具(PPE)の着脱を完璧にこなせる自信もない。どうしよう? あれこれ考えるが答えが出ない。 手術部位や施設,手術室の環境により,麻酔管理のアプローチは複数あると思われるが,おのおのが置かれた状況下で最善の麻酔管理方法について誌上で議論してみたい。