著者
須藤 ありさ 片桐 誠一朗 赤羽 大悟 大月 俊輔 山田 晃子 勝呂 多光子 浅野 倫代 吉澤 成一郎 田中 裕子 古屋 奈穂子 岡部 聖一 藤本 博昭 後藤 守孝 後藤 明彦
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.83-88, 2022 (Released:2022-03-08)
参考文献数
15

剥離性食道炎は食道扁平上皮組織のシート状脱落を特徴とする稀な疾患である。抗凝固薬など薬剤性の報告があるが,造血幹細胞移植に合併した報告は少ない。今回,移植後早期に剥離性食道炎を発症した急性骨髄性白血病(AML)を経験した。症例は52歳,女性。FLT3-ITD変異陽性AML第一寛解期にFBM(fludarabine 180 mg/m2,busulfan 12.8 mg/m2,melphalan 80 mg/m2)による非血縁者間同種末梢血造血幹細胞移植を実施した。GVHD予防は,tacrolimusおよび短期methotrexateを実施した。前処置中よりCTCAE grade 3の嘔吐を認めていた。移植後5日目に嘔吐した際,長さ10 cm,幅1 cmの白色帯状物を口腔内より排出した。上部消化管内視鏡検査で食道全域の粘膜剥離を確認し剥離性食道炎と診断した。保存的加療で改善を認めた。前処置関連毒性を背景に,頻繁な嘔吐による食道への機械的圧力が粘膜剥離に寄与した可能性が考えられた。移植前処置として普及しているFBMにおいても剥離性食道炎に対し,十分な注意が必要である。