著者
大木 啓介
出版者
尚美学園大学総合政策学部
雑誌
尚美学園大学総合政策研究紀要 (ISSN:13463802)
巻号頁・発行日
no.27, pp.151-171, 2016-03

本稿は、二十世紀第4 四半期に比較政治学のなかで「成長産業」と目されるに至った比較民主化論に焦点を据え、この研究分野で際立たされた一般化論者と個性化論者との論戦を吟味する。意図するところは、この論戦を通じて浮き彫りにされた一般化の信奉者と独自性の信奉者との相対立する主張を整序して、比較民主化論の態様を明らかにすると共に、「法則定立- 個性記述」論争の解明に多少とも資する素材を提供することにある。そこで先ず、比較民主化論がいかに展開してきたかを粗描して、移行論者(一般化の信奉者)と地域研究者(独自性の信奉者)との論戦の学説史的背景を概観する。その上で、この論戦がいかに交わされてきたのかを要約的に指摘して、移行論とその批判の輪郭を確認したい。