著者
大木 新造 松村 敏
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

近年ようやく国内における近代都市比較研究が行なわれるようになったが, その成果はとぼしい. よって本研究は, 近代都市比較研究の基盤整備を目的として, 東京・大阪・京都の三都比較に関する文献の収集と検討を行なった. 本年度研究の実施計画:近代都市研究及び都市に関する新聞記事・雑誌記事を中心に渉猟し, 三都に関するものを収集し, その内容にしたがって分類した.本年度研究の内容:収集した文献は, 東京・大阪・京都の三都を比較したものを中心に, 東京・大阪・京都, 京都・東京の二都を比較したものにおよび, 全部で約350件に及んだ. これらについて分類し, 内容の分析を行なった. それによれば, 近代に入ってからの三都比較は, 大正期前・中半にピークを迎え, 以後, 京都が比較の対象となることは少なくなり, もっぱら東京・大阪の二都比較が行なわれることとなる. 近世においては, 江戸・京都の二都比較が中心で, それも京都に対する江戸からの批判がもっぱらであったが, 近代, それも大正期をすぎたあたりから, 大阪から東京への批判が多くなる. 戦後は, 東京に対する批判は次第に高まる傾向をみせ, 高度成長期をすぎたころには, 東京を「敵視」するものまで登場するようになっている. この背景には, 近世, 近代, 現代(戦後)へと三都の, 国内での位置・関係の変化があったことを指摘できる. つまり, 近世における江戸の成長, 戦後における東京の突出という現象が, それを端的に示していよう.また, 三都の比較は, 政治, 経済, 風俗, 生活等の各分野におよび, 日本分化・社会の多様性を示すものとなっている.本年度の研究は新聞・雑誌・週刊誌の記事までも視野に入れ, 厳密な意味で比較とは言えないものまで広く収集した.