著者
棗田 孝晴 大木 智矢
出版者
Ecology and Civil Engineering Society
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.119-125, 2014
被引用文献数
4

千葉県北東部の谷津田で,トウキョウサンショウオ (<i>Hynobius tokyoensis</i>) の産卵場の分布と産卵場の周辺環境に関する調査を 2012 年に行った.3 月中旬から 4 月下旬にかけて 50 か所の産卵場が確認された.産卵場ごとの発見卵嚢数は 1 ~ 52 個の範囲 (平均 9.4 個) で,卵嚢数 10 個未満の少規模産卵場が全体の 70%以上を占めていた.産卵後の成体の再上陸および幼生の成長・変態後の上陸に関係すると考えられる水路幅,水深,堆積物深さ,斜面林距離,水路岸の勾配及び産卵場の面積の 6 変数を基にした一般化線形モデルの解析結果から,斜面林距離が本種の卵嚢数に有意な負の影響を及ぼすことが示された.変態後の幼体及び成体の通常の生息場所である斜面林と産卵場である水場との間の空間的な連続性を微視的スケールで保持することが,本種の個体群を存続させる上で重要と考えられた.