著者
門間 哲雄 斉藤 史郎 大木 隆弘 佐藤 裕之 戸矢 和仁 土器屋 卓志 村井 勝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.91, no.10, pp.657-665, 2000-10-20
参考文献数
16
被引用文献数
3 2

(目的)本邦での密封小線源治療(小線源治療)は放射性物質の体内永久留置が法律により厳しく規制されているため,主に高線量率イリジウムを用いた一時的留置法が数施設で施行されているにすぎない.前立腺癌に対して低線量率イリジウム(LDR-Ir)を用いて小線源治療を施行している施設は当施設だけであり,本研究においてこの治療法の臨床成績について検証する.(対象と方法)1997年12月から1999年12月まで組織学的に前立腺腺癌と診断された26症例(Stage B 92%;Stage C 8%)に対して小線源治療を施行した.23例は小線源治療単独(1例はneoadjuvant療法を施行),3例については小線源治療と外照射放射線治療(ERT)の併用を行った.(結果)小線源治療単独群では2から26カ月の経過観察期間において,治療前PSA値が20ng/ml以上の9症例中8例がPSA failureとなり,20ng/ml未満では13例すべてにおいてPSA failureが見られなかった.Gleason's score7以上の11例のうち8例にPSA failureを認めたが,6以下の14例は,すべてにおいてPSA failureが見られなかった.併用療法群では4から9カ月の経過観察期間においてPSA failureを認めなかった.全症例の経過中,重篤な合併症は認められなかった.(結論)PSA値やGleason's scoreによって症例を厳密に選択することができれば,LDR-Irを用いた小線源治療は有効な治療となりうることが本研究から示された.