- 著者
-
佐藤 裕之
- 出版者
- 弘前大学
- 雑誌
- 新学術領域研究(研究領域提案型)
- 巻号頁・発行日
- 2013-04-01
(1)バルクナノメタルのマクロな残留応力の評価:残留応力と残留ひずみの評価方法について検討した。バルクナノメタルのように小型の試験材を対象として残留応力を測定する方法を検討するため,X線を用いた残留応力の測定方法について,東北大学の協力を得つつ,2D-XRD法の適用可能性について検討し,測定した。また,穿孔法によるひずみ-残留応力測定法についても実験した。提供を受けたバルクナノメタルの残留応力テンソルの測定を試み,残留応力の主応力と主軸の評価を行い次の結果を得た。ARB法により作成したバルクナノメタルの残留応力の主軸は,圧延方向と一致しており,熱処理によって主応力の大きさは変化するものの主軸の方向は変化しない。残留応力から見積もられるひずみは,バルクナノメタルの作成方法にも依存する。(2)マクロな変調組織を持つ合金の強化法の検討結晶粒径や硬度に分布や変調構造を作り込む方法として複合負荷による方法を実験的に検討し,室温強度と高温強度とマクロ組織の様相との関係を検討した。アルミニウム合金では,室温強度と高温強度(クリープ強度)を同時に改善できる場合のあることを見いだした。ホールペッチの関係やいわゆるDornの式からは,結晶粒の微細化による強度変化は,室温と高温では相反する依存性を持ち,広い温度範囲で強度を改善することは困難と予想されるが,組織の不均一さを積極的に生かすことによる室温強度と高温強度の同時改善の可能性を示した。高温強度の評価法として,代表者が提唱している「ひずみ加速指数」を用いる方法を改善して用いた。