著者
大杉 佳美 内山 伊知郎
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.193-201, 2013

本研究では,物理的概念のひとつである固体性の認識に関する課題において,3歳児から5歳児の探索行動が発達的にどのように変化するかを検討した。探索課題を達成するためには,装置に挿入されたボールの動きを止める板は一枚のつながった板であると判断し(対象物の単一性),ボールは板を突き抜けないという固体性の知識に基づいて探索すること,あるいは.板の形状を表象することが求められる。そこで本研究では,ボールの動きを遮る板に穴をあけ.ボールはその穴を通過して落下するが,あたかもその板がつながっているように見えるという探索課題を実施した。その結果,3歳児は,対象物の単一性と固体性の知識を用いてボールを見つけているが,表象しながら探索することが難しかったのに対し,4歳以降の子どもは,対象物の単一性と固体性の知識を用いることができるだけでなく,装置に挿入された板の形状を表象しながら探索することもできることが明らかとなった。つまり,板の形状を表象しながら探索することができるようになるのは,3歳から4歳にかけてであること,また,表象しながら探索するというスキルは,スクリーンの両端から見えている板に注目してボールを見つけることができるようになれば,獲得されるスキルである可能性が示唆された。