著者
大栗 弾宏
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、マリファナに含まれ摂食促進作用を持つカンナビノイドの味細胞における味応答修飾効果、およびレプチンとの拮抗性について、正常系(C57BL/6)マウス、あるいはレプチン受容体変異系であるdb/db肥満マウス、さらにカンナビノイド受容体欠損であるCB1-KOマウスを用いて、カンナビノイド腹腔内投与前後での味覚感受性の変化を電気生理学的および行動学的手法により解析し、末梢味覚器からの情報による食嗜好性の形成・調節メカニズムの検討、ならびに肥満との関連性を検討することを目的としている。正常系マウスを用いて、舌前部の味蕾を支配する鼓索神経応答記録の経時的変化を解析したところ、各種甘味および旨味の相乗効果を引き起こすMSG+IMP応答のみ、内因性カンナビノイド(アナンダミドあるいは2-AG)投与5分後に増大し始め、約30分後にピークに達し、その後ゆるやかにコントロールレベルに戻ることがわかった。またその増大効果は、カンナビノイド投与濃度依存的であることが明らかとなった。CB1-KOマウスでは、それらの効果が認められなかった。さらに、正常系マウスに比べて甘味特異的に高い応答性を示すdb/dbマウスにおいてもそれらの効果が認められなかったが、例数は少ないもののCB1アンタゴニストであるAM251の投与により甘味応答の抑制を示す傾向にあった。一方、行動応答解析においても、正常系およびCB-1KOマウスは神経応答と同様の結果を示すことがわかった。このことから、カンナビノイドはCB1を介し、中枢のみならず末梢からも摂食(特に甘味嗜好)を促進し、食調節に関与している可能性が示唆された。以上の結果をまとめ、現在論文投稿準備中である。