著者
大森 佐和
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_80-1_108, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
37

本稿は, 世界金融危機以後になされた国際通貨基金 (IMF) の融資プログラムの改革を踏まえ, IMF加盟国における融資プログラムに関する米国の影響力が, 世界金融危機の前と後で変化したか否かを1992-2015年のIMF加盟国のデータベースを用い計量的に分析することを目的としている。分析の結果から, 世界金融危機前には, 米国はIMF融資プログラムの承認に有意な影響を与えていることが従来の先行研究通り示されたが, 世界金融危機後には, こうした米国の影響は顕著に減少したことが明らかとなった。また, 日本が米国から独立してIMF融資プログラムの承認に与える影響は, 世界金融危機前の期間のアジア地域においてのみ認められた。従って, IMFが世界金融危機以降に行ってきた改革は, 全ての加盟国を公平に扱うべきであるというIMFに対する批判に応える方向で変化するものとなっていると思われる。しかし, このようなIMF改革の努力の成果が, 米国の新大統領のもとでも継続するか, 今後引き続き検討が必要である。