著者
大槻 志郎
出版者
龍谷大学
雑誌
龍谷紀要 (ISSN:02890917)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.29-41, 2006-01-31

Isak Dinesenの物語には土地のモチーフが頻出するが、その重要性は、何よりそれがディーネセン最大の主題である<宿命>の隠喩として機能している点にある。息子が罪に問われ、これを救うために落命する母親を描いた代表作"Sorrow-Acre"はその典型であり、小論では、物語の真の焦点が母親よりもむしろ周辺の人物たちの運命にこそあり、土地の表象がその問題を暗示していること、さらに、こうした用法はほかの作品にもみられるものであり、定住を含意する<土地>が、夢の追求を暗示する<移動>としばしば対置されて、夢の挫折としての運命や、それとの和解を表現すべく機能していることを示す。