著者
加藤 大輔 上南 静佳 大槻 輝 天ヶ瀬 紀久子
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【背景・目的】5-フルオロウラシル (5-FU) は小腸絨毛の短縮や腺窩の破壊による腸炎を発生させ下痢や体重減少を引き起こすという報告があり、がん化学療法における問題となっている。ジンセノシドRd (GRd)はニンジンに含まれるサポニンであり、大腸炎に対して抗炎症作用が報告されているが、5-FU誘起性小腸炎に対する作用は明らかではない。そこで本研究では、5-FU誘起性腸炎に対するGRdの有用性について検討した。【方法】雄性C57BL/6Nマウスに5-FU (50 mg/kg)およびGRd (60 or 100 mg/kg)を7日間投与した。投与期間中は体重および下痢の程度を経日的に測定した。腸炎の程度は、薬物投与終了後、病理組織学的検討、ミエロペルオキシダーゼ (MPO)活性の測定および炎症関連分子の発現量の測定により評価した。【結果・考察】5-FUの7日間連続投与により、経日的な体重減少および下痢の増悪が認められ、小腸絨毛の短縮、腺窩数および腺窩中の細胞数の減少が観察された。小腸粘膜のMPO活性は5-FU投与群において増大し、TNF-αのmRNA発現量は増加した。GRd併用投与群では、5-FU投与群と同様に体重減少および下痢の増悪、小腸絨毛の短縮が認められたが、腺窩数および腺窩中の細胞数の減少が有意に改善された。またMPO活性の増大を有意に抑制し、TNF-αのmRNA発現量の増加を抑制する傾向が見られた。これらの結果から、5-FU誘起性腸炎はGRdの併用投与により抑制されることが示された。GRdによる抗炎症作用はNF-κBの発現抑制に起因するという報告があることから、今回認められた腸炎の抑制はNF-κBの関与が考えられる。