著者
加藤 大輔 小山 隆夫 中野 雅子 新井 高 前田 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.58-65, 2010-02-28 (Released:2018-03-29)
参考文献数
49
被引用文献数
1

根管治療は根管の複雑性や治療の困難さから,しばしば失敗することがある.治療成績向上のためには,根管消毒剤の使用が不可欠とされている.しかしながら,根管内に残存する微生物に対するこれらの消毒剤の抗菌性の有効性は確認されていない.そこで,本研究ではin vitro根管モデルを使用して,難治性根尖性歯周炎の歯に残存することが知られている微生物に対する根管消毒剤の抗菌性の有効性を調べた.被験微生物は,Enterococcus faecalis,Candida albicans,Pseudomonas aeruginosa,Staphylococcus aureusを用いた.また,根管消毒剤にはホルムクレゾール(FC),カンフル・カルボール(CC),水酸化カルシウム(Ca(OH)2),ヨードチンキ(J),メトロニダゾール,ミノサイクリンおよびシプロキサシンの3種混合薬剤(3Mix)を使用した.根尖病巣実験モデルは,根管を90号サイズに形成し,病巣部に相当する部位を半球状に形成した.微生物を含んだ病巣部は根尖から離し,生理食塩水寒天で挟み,サンドイッチ様の3層構造とした.それぞれ37℃で1時間,1,3,7日間薬剤を作用させた後,根尖部より無菌的に寒天を採取した.寒天はトリプティックソイ(TS)液体培地にホモジナイズし,適宜希釈してTS寒天培地上で37℃にて好気培養を行い,出現したコロニー数(log cfu/ml)を計測した.その結果,FCが4種の微生物すべてに十分な抗菌性を有し,それ以外の薬剤は,FCに次いで,J,Ca(OH)2の順で抗菌性をもつこと,また,CCはP.aeruginosa以外の3菌種には抗菌性をもっていないこと,3Mixは4種の微生物すべてに十分な抗菌性をもっていないことが示された.この研究から,FCが最も有効であることが示唆された.
著者
Cong Liu 坂地 泰紀 和泉 潔 早川 正亮 塚本 和哉 加藤 大輔
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-029, pp.28-31, 2022-10-08 (Released:2022-10-01)

近年、中国経済の躍進に伴い、中国の各国経済に与える影響が高まっている。そのため、米国経済を中心に把握するだけではなく、中国経済の動向を把握することがより重要になっている。しかしながら、中国経済に言及した英語記事は中国語媒体よりも少なく、また、中国語で記載された中国経済に関する膨大な記事から選別してトピックを抽出することは現状難しい。そこで本研究では、中国語記事と英語記事の両方からセンチメントを獲得し、これらを合わせて利用することで、中国市場インデックスを予測する新たなモデルを提案する。
著者
高尾 聡 浅居 悦子 小松 優子 桑原 陽子 福田 珠里 山根 主信 多門 大介 吉田 直之 工藤 翔二 上武 智樹 加藤 大輔
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.263-267, 2014-08-31 (Released:2015-11-13)
参考文献数
12

在宅酸素療法(home oxygen therapy: HOT)では携帯用酸素ボンベの使用時間を延長させるために,呼吸同調装置を併用して吸気時に酸素供給を行う同調式が一般的である.しかし,院内で使用される医療用酸素ボンベのような吸気,呼気に関係なく酸素が供給される連続式と比較すると,経皮的酸素飽和度(SpO2)の値が同調式で低くなることを経験する.今回,慢性呼吸器疾患患者20名に対し,携帯用酸素ボンベを使用しての6分間歩行試験(6 minutes walking test: 6MWT)を連続式と同調式で行った.その結果,同一酸素流量においてSpO2の平均値・最頻値・最高値・最低値が同調式で有意に低かった.HOTを処方する際には,呼吸同調装置を取り付けた携帯用酸素ボンベを用いたうえで労作時のSpO2の測定および酸素流量の設定を行うことが望ましい.
著者
加藤 大輔
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.374-382, 2016-07-01 (Released:2017-07-01)
参考文献数
29

グラスウールなどの多孔質材料内伝搬音において,粘性と熱伝導による減衰の存在は,古くから知られている。しかし,これら各々の減衰が,具体的にどのような機能を果たすのか,明確にされていない。これらが解明されれば,多孔質材料内伝搬音の,数ある予測モデルの取捨選択,あるいは,より優れた予測モデルの構築につながると考えられる。そこで,本稿では,粘性と熱伝導による減衰の理論的背景を整理し,幾つかの予測モデルを取り上げ,各々の減衰について調査する。
著者
田尾 光規 大元 一弘 加藤 大輔 寺田 健一郎 芝田 興史
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.413-418, 2015 (Released:2018-01-25)
参考文献数
2
被引用文献数
1

車体やシャシーの剛性(車両剛性)違いでの操舵に対する車両応答の微小な変化と,車両応答の違いがコーナーを走行しているドライバーのハンドル操作修正量(修正操舵)へ与える影響を組み合わせることで,これまで難しいとされてきた車両剛性と車両運動性能の定量的な関係の一つを示した.
著者
加藤 大輔 上南 静佳 大槻 輝 天ヶ瀬 紀久子
雑誌
日本薬学会第142年会(名古屋)
巻号頁・発行日
2022-02-01

【背景・目的】5-フルオロウラシル (5-FU) は小腸絨毛の短縮や腺窩の破壊による腸炎を発生させ下痢や体重減少を引き起こすという報告があり、がん化学療法における問題となっている。ジンセノシドRd (GRd)はニンジンに含まれるサポニンであり、大腸炎に対して抗炎症作用が報告されているが、5-FU誘起性小腸炎に対する作用は明らかではない。そこで本研究では、5-FU誘起性腸炎に対するGRdの有用性について検討した。【方法】雄性C57BL/6Nマウスに5-FU (50 mg/kg)およびGRd (60 or 100 mg/kg)を7日間投与した。投与期間中は体重および下痢の程度を経日的に測定した。腸炎の程度は、薬物投与終了後、病理組織学的検討、ミエロペルオキシダーゼ (MPO)活性の測定および炎症関連分子の発現量の測定により評価した。【結果・考察】5-FUの7日間連続投与により、経日的な体重減少および下痢の増悪が認められ、小腸絨毛の短縮、腺窩数および腺窩中の細胞数の減少が観察された。小腸粘膜のMPO活性は5-FU投与群において増大し、TNF-αのmRNA発現量は増加した。GRd併用投与群では、5-FU投与群と同様に体重減少および下痢の増悪、小腸絨毛の短縮が認められたが、腺窩数および腺窩中の細胞数の減少が有意に改善された。またMPO活性の増大を有意に抑制し、TNF-αのmRNA発現量の増加を抑制する傾向が見られた。これらの結果から、5-FU誘起性腸炎はGRdの併用投与により抑制されることが示された。GRdによる抗炎症作用はNF-κBの発現抑制に起因するという報告があることから、今回認められた腸炎の抑制はNF-κBの関与が考えられる。
著者
上田 篤志 山本 暁彦 加藤 大輔 岸 義人
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2014

<p> ハリコンドリン類は上村、平田らによってクロイソカイメンから単離および構造決定されたポリエーテル系マクロリドである。<sup>2)</sup>その複雑な構造もさることながら、強力な抗腫瘍活性を示すことから創薬研究のシード化合物としての利用も試みられ、ハリコンドリンの右側部分をモチーフとした誘導体であるハラヴェンが2011年に乳ガンの治療薬として上市されている。構造的にハリコンドリン類は、C12およびC13位の酸化度の違いによりA、B、およびCシリーズに分類され、他方側鎖の構造によってノルハリコンドリン、ハリコンドリン、およびホモハリコンドリンに分類される (Figure 1)。これらの組み合わせからなる9種の亜種のうち、ハリコンドリンAを除いた8種類が現在までに単離報告されている。今回、未だ自然界からは単離されていないハリコンドリンAの初の全合成を達成したので報告する。合成のハイライトとしては、(1)Cr触媒によるC13/C14位でのカップリングとビニロガスエステルの面選択的エポキシ化を鍵とするC1–C19フラグメントの合成、(2)不斉Ni/Cr触媒反応<sup>3)</sup>に続くフラン環形成反応及び椎名マクロラクトン化による右側マクロラクトン環の構築、(3)C1–C38とC39–C54フラグメントのNi/Cr試薬による連結、(4)TMSOTfを用いた新規高立体選択的異性化反応によるC38-epi-ハリコンドリンAからハリコンドリンAへの異性化の4点があげられる。さらに合成したハリコンドリンAの構造の正しさを証明するため以下の実験を行った。第一にハリコンドリンAの合成に用いたC1–C38フラグメントから、既知の天然物ノルハリコンドリンA(2)およびホモハリコンドリンA(3)を合成した。第二にハリコンドリンAとその他のハリコンドリン類とのNMRデータの比較を行った。<sup>4)</sup></p><p>Figure 1.Structure of the halichondrin class of natural product.</p><p>(1)Cr触媒的カップリングと選択的エポキシ化によるC1−C19部位の合成</p><p> C1−C19フラグメントはヨウ化アルキン4と臭化ビニル5から合成した(Scheme 1)。これら二つの原料はいずれもNi/Crカップリング反応の良好な基質であるが、Ni触媒の量を低容量に抑えることでヨウ化アルキンのみを選択的に活性化させ、アルデヒドとのカップリング体を91%の高収率で得ることに成功した。生じた水酸基を酸化した後に得られたイノン6を、過剰のピリジン存在下HF・ピリジンで処理することで、三つのTBS基のうち、C9位とC11位のTBS基を選択的に脱保護することに成功した。この過程においてC9位の水酸基はイノン部位にオキシマイケル付加し、C11位の水酸基との水素結合による安定化でE体のビニロガスエステル7が選択的に得られた。ビニロガスエステル7のエポキシ化はジメチルジオキシランを用いることでコンベックス面から選択的に進行し、続く酸によるエポキシドの開環とHFによるTBS基の脱保護を伴うC14位でのケタール化までの3工程をワンポットで行うことで、収率92%でC12、C13位に水酸基を有するハリコンドリンA骨格の構築に成功した。最後にC12/C13位ジオールをp-アニシリデンで保護することにより、C19位でのカップリングの基質8へと導いた。Scheme 1において</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>
著者
加藤 大輔 塩路 直子 池田 朋広
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.516-524, 2021

医療ニーズを持つ患者が自宅での生活を希望しており,地域特性に応じた連携体制の整備が急務となっている。連携を担う1職種である医療ソーシャルワーカー(MSW)は,業務指針に地域活動が示されているが,退院支援業務が中心となっている現実がある。そこで,MSWによる望ましい地域活動のあり方を明らかにする目的で文献調査を行なった。方法は,MSWの地域活動に関する国内の文献を基に,実践事例論文からはMSWが中心的に介入している実践を抽出し,調査研究論文からは地域活動に影響している要因を,阻害要因と促進要因に分類して抽出した。その結果,実践は「多機関多職種間の連携体制の構築」「地域生活を支えるコミュニティネットワークの構築」「サロン等地域住民の交流の場の創設等による地域の活性化」「勉強会の開催等,地域全体に対する啓発活動」であった。次に阻害要因は,「所属機関の業務規定等による活動の制限」「業務割合が退院支援中心であること」「配置人員不足」「MSW独自の役割のあいまい化」の4点に,促進要因は,「院内外から取り組みによる効果に理解を得る」「多機関多職種や地域の非専門職との連携を促進する」「MSW独自の役割を果たす」「地域での立場と院内での業務を確立する」の4点に集約された。地域活動の定着に向けた課題解決には,ソーシャルワークに基づく視点と手法による実践,院内での業務環境の整備,院内外での地域連携における役割の確立が重要であった。
著者
木村 友美 加藤 大輔 西村 拓矢 James Van Schyndle 宇野 慧 吉田 正貴
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.5, pp.701-710, 2020-05-01 (Released:2020-05-01)
参考文献数
45
被引用文献数
1

We previously reported that anticholinergic (AC) drug use increases with age in the elderly Japanese population. In this analysis, we investigated attribution for each AC drug type to total AC burden using different elderly age groups. Prescription records (from 09/23/2015 to 12/31/2016) for outpatients using any AC were extracted from pharmacy claims (primary source) and hospital-based databases. AC burden (number of AC drugs and AC score) and AC type were assessed using the Anticholinergic Cognitive Burden (ACB) scale, Anticholinergic Drug Scale (ADS), Anticholinergic Risk Scale (ARS), and Beers criteria. Age was categorized using three subgroups (65-74, 75-84, and ≥85 years). Overall, 125426, 140634, 35628, and 23149 of the pharmacy outpatients received ≥1 AC drug from the ACB scale, ADS, ARS, or Beers criteria, respectively. The number of AC drugs increased with age for the ACB scale and ADS groups; but decreased for the ARS and Beers criteria. Antihypertensives provided the biggest contribution to AC score using the ACB scale and ADS, and antihistamines for the ARS. Proportional attribution to AC score typically increased with age for antihypertensives (ADS highest proportion: 34.6% for ≥85 years) and cardiac agents, but decreased for antihistamines (ARS lowest proportion: 15.3% for ≥85 years), corticosteroids, and antiepileptics. Similar findings were typically observed for the hospital database. In conclusion, antihypertensives were the principal type of AC drugs using the ACB scale and ADS and their attribution to AC score increased with age. Antihistamines were the principal drug type for the ARS.
著者
松葉 敬文 佐藤 淳 蔵 研也 加藤 大輔 村上 弘
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.81-84, 2011 (Released:2012-03-29)
参考文献数
10

健康な右利きの歯科医師21名に対し,リスク(risk)状況および不確実(ambiguity,またはuncertainty)状況において不快画像刺激と中立的画像刺激を呈示し,3TのfMRI装置を用いて脳機能画像解析を行った.fMRI装置内で被験者が行う課題にはBalloon Analogue Risk Task(BART)課題を利用した.被験者が直面している課題の確率を事前に告知している状況をリスク状況,確率を全く告知していない状況を不確実状況とした.結果,不快画像刺激により不確実な状況では扁桃体と線条体(被殻)が有意に賦活し,リスク状況では前帯状皮質の活動が有意であったが扁桃体の賦活は確認されなかった.この結果は,リスク状況では不確実状況と異なり,扁桃体の活動を抑制するような機能が働いている可能性を示唆するものである.
著者
松田 秀人 橋本 和佳 関 哲哉 吉田 真琴 増田 拓也 加藤 大輔 伊藤 裕 栗崎 吉博 斉藤 滋 高田 和夫 長嶋 正實 滝口 俊男
出版者
Japanese Society for Mastication Science and Health Promotion
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.141-145, 2002

チューインガムの機能には, 咀嚼能力の向上, 脳血流の亢進, 中枢神経系への作用, 唾液の分泌亢進など咀嚼による直接作用が認められている. 食欲の調節機構としては, 満腹中枢および摂食中枢が食行動調節を司っている. 咀嚼が中枢に及ぼす影響についての研究は少なく, 臨床研究は特に少ない. 摂食抑制物質のうちヒスタミンの分泌は, 咀嚼すなわち噛む刺激によることが, 遺伝性肥満動物Zuckerラット実験により判明した. このような背景から, 食事前にチューインガムを噛むことにより, 咀嚼がインスリン分泌に及ぼす影響について検討した.<BR>19歳から25歳までの健康な女子19名を対象に, ガムベースの15分間咀嚼の後, 75gブドウ糖負荷試験を行い, ガム咀嚼の前, 咀嚼後3分, 6分, 9分, 15分と, それに引き続いて75gブドウ糖負荷後の15分, 30分, 60分, 120分後の計9回, 肘静脈より採血して, 血糖, インスリンを測定した. さらに, ガムを咀嚼しない場合で同様の測定を行った.<BR>その結果, コントロールに比べてガムベースを咀嚼した時のほうが, 75gブドウ糖負荷後の30分値において, インスリン分泌量が多かった. このことから, 咀嚼による中枢への関与が示唆された.