著者
大橋 一仁 藤原 貴典 塚本 真也 中島 利勝
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

昨年度の研究において確認されたAl-Mg合金を焼結ダイヤモンドバイトで超精密切削する場合の切削面の中央周辺部の凹形状発現現象をさらに詳細に解明し,極めて高い形状精度を有する超精密加工面を創成するための以下のような結果が得られた。超精密切削過程における切れ刃先端からバイトのシャンク部にかけての温度上昇量の変化過程を求め,各部の温度上昇量と切れ刃である焼結ダイヤモンドならびにシャンク部材である構造用炭素鋼の熱膨張係数から算出した工具先端の運動軌跡と超精密切削面形状はほぼ同様であり,表面の形状誤差は超精密切削過程における切削熱による切れ刃先端のZ軸方向への移動量に相当することが明らかになった。特に,切削点においては,切削開始直後に約130℃の温度上昇が発生し,その後工作物の中心に向かうに従って徐々に切削点温度は減少することが明らかになった。また,焼結ダイヤモンドバイトの剛性を求め,切れ刃への切削抵抗の作用による工具の弾性変形量を実験的に求めた。そこで,バイトの熱膨張量と弾性変形量を考慮して求めた切れ刃先端の運動軌跡と加工後の超精密切削面の形状ならびに位置を対比させ,超精密切削過程における工作物の熱膨張量は,およそ400nmであることが明らかになった。さらに,バイトの送り速度を変化させて超精密切削実験を行った結果,超精密切削面の形状精度に大きな差は認められないものの,バイトの熱膨張量が最大となる切削面の凹部の位置が送り速度の増加とともに工作物中心部に移行することが明らかになった。