- 著者
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大橋 和幸
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.2013, 2013
1.はじめにOx濃度の年平均値は,1985~2004年度の20年間で約5ppb上昇しており(光化学オキシダント・対流圏オゾン検討会,2007),環境基準達成局数の割合は一般局・自排局ともに2010年に至っても0%であった(環境省報道発表資料,2012).この原因として,越境汚染や地域気象の状況が変化したことなどが指摘されている.また,以前よりわが国では週末の方が週日と比較して相対的にNOx濃度が低いにも関わらず,Ox濃度が高くなる週末効果という現象が確認されてきた.例えば,大原(2006)によると,Oxは週日の方がその場での生成量は多いが,週末はNOの排出量が減少するため,O3が分解されにくくなることが原因であるとしている.一方,神成(2006)は,HC-limitedの環境下において,週末にNOxの排出量が減少することによってO3生成抑制効果が解除されるため,週末に高濃度になるとしている.この様なOx濃度の近年における経年変化傾向や,週末効果といった短周期変動が指摘され,その原因が考えられてきているが,一方,こうした現象の時空間的特徴に関しては必ずしも明らかとなっていない.そこで本研究では関東地方を対象として,近年のOx濃度上昇および週末効果について,時空間変動からそれらの要因を考察することを目的とした.2.方法対象地域は関東地方1都6県とした.使用したデータは国立環境研究所で取り纏めている大気汚染常時監視測定データの1時間値であり,対象物質はOxである.対象期間は1980年4月から2011年3月までとした.はじめに,Oxの季節的・経年的な時間的特性を比較するため,月別平均値に対して主成分分析を行った.ただし,測定局により観測開始時期の違いや欠測値を含む期間が存在するため,対象地域内をグリッドで区切り,グリッド平均値を作成した後,解析を行っている.また,週末効果を把握する観点から,日平均値に対して同様のグリッド化を行ったデータに対しても主成分分析を行った.3.結果月平均値に対して行った主成分分析の結果,第1主成分には関東地方全域の濃度変動を示すモードが検出された.この成分は経年的に見ると,2000年頃からOx濃度が増加していることを示している.また,地域的な増加量の違いが認められ,北関東南部および千葉県では大きく,南関東では相対的に小さい傾向にあった.さらに,日平均値に対する解析結果から,週末効果に対する濃度変動は1980年代には小さく,近年において大きくなる傾向を持つことが明らかとなった.季節変化成分も顕著に認められ,春期(4月・5月)に増加の極大を持ち,経年的な増加傾向がこの時期における高濃度化と極大期の拡大に対応していることが示唆される.