著者
櫻谷 眞理子 大橋 喜美子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、乳幼児を養育中の母親の意識や子育ての実態を把握し、適切な社会的支援のあり方を明らかにすることを目的としている。595人の親へ質問紙を配布したところ、365人から回答が得られた。その結果、親になるまで赤ちゃんの世話をした経験がある人は3割に過ぎず、経験がある人に比べ、経験の無い人の育児不安はより高い傾向がみられた。また、出産前のイメージと現実とのギャップがあったと答えた人は52.5%で、そのうち、76.5%が現実の子育ては思っていたよりも大変だと答えている。なお、イメージと現実とのギャップがあったと答えた人たちの方が育児不安は高い傾向がみられた。養育態度や意識について把握したところ、子どもを感情的に叱ったり、体罰を多用する傾向がみられた。例えば、大きな声で叱るが85.8%、叩いて叱るが55.1%(複数回答)という結果であった。子どもに苛立つことがあるという回答は68.4%、自分は育児に向いていないと感じることがあるという回答は53.4%であった。また、子育てに疲れるという回答は82.3%、時間的なゆとりがほしいという回答は91.9%であった。母親たちの自由時間はほとんど無く、専業の母でも平均2時間で、有職の母の平均1時間とあまり差がなかった。夫の家事・育児参加に満足している妻は、3人に1人に過ぎなかった。さらに、近隣からのサポートも受けられず、孤独な育児を強いられている実態が浮き彫りになった。なお、母親が育児に専念すべきと考えている人は、3.8%に過ぎず、28.7%の母親は保育所を利用したいと希望しており、48.7%は時々保育を受けたいと希望していることがわかった。これらのことから、親の不安や負担感の軽減を図るためには、必要なときにはいつでも利用できる保育システムを整え、養育技術を学習する機会等を保障することが不可欠になってきているといえよう。