著者
伊藤 由美子 大橋 寛子
出版者
文化女子大学
雑誌
文化女子大学紀要 服装学・造形学研究 (ISSN:13461869)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.11-20, 2011-01

本学園服飾博物館所蔵品の中で,装飾に優れたオートクチュール仕立てのイブニングドレスを取り上げ,その詳細な記録を残すことを目的とした。方法は,作品の構造,縫製・装飾技法は写真撮影により情報を収集し,実測および立体裁断の手法を用いてパターンを採取,さらにトワルによる再現を行った。結果,構造は,上半身保形のため内側に脇身頃を除く前後身頃の其々ウエストまで5本の金属製ボーンが裏打ち布に留められていた。内ベルトは身頃と裏地との間にあった。縫製技法では,裾の始末に現在の技法との相違点がみられ,折り上げた縫い代の0.5cm奥を千鳥がけで留めていた。装飾は,図案の輪郭を1本糸の鎖縫いミシンで縫われ,大きさの違う5種のラインストーン,4種のパールを巧みに使い分けており,穂の部分は,白の綿糸で隙間なく糸を渡し,その上に長さ2mm弱の管状ビーズで刺繍されていた。パターンは,ウエストより下部に使用した布幅の分量をそのまま生かし,脇身頃に利用していた。今回は,パターン採取とそのフォルムの確認およびドレス構造と技法のみの調査結果に留まった。今後は,これらを踏まえて資料に近い布を使用した実物製作を通しての縫製技法を分析したいと考える。