著者
大河 和夏 増谷 利博 石垣 逸朗
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.211-219, 2006-12-31

神奈川県丹沢山地内の中津川流域(3,544ha)を対象とし,1947年にみられた崩壊地の残存傾向と地形要因の関係について数量化II類により解析した。崩壊地は1993年までに植生回復したものを回復型,1993年もなお残存しているものを残存型と分類した。また,地形因子には標高,斜面方位,傾斜,横断形状,傾斜変換点の5つを用いた。その結果,偏相関係数・レンジはともに標高>斜面方位>傾斜変換点>横断形状>傾斜の順となり,特に標高と斜面方位の影響が大きくなった。標高区分900m以上で残存傾向となり,標高が高い区分になるほどその傾向も強くなった。斜面方位は南,南東,西向き斜面に残存傾向がみられた。こうした高標高エリアの南と南東向き斜面は,凍結・融解作用により表土の移動が激しく崩壊地に侵入した植生が定着しにくいため,崩壊地の残存期聞か長期化したのではないかと考えられる。このようなエリアでは土壌保全を優先し,天然林を主とする森林管理が適当であると考えられる。